語学と文学に触れることで見えてくる「新しい自分」
文学科フランス文学専修 澤田 直 教授
2016/12/01
教員に聞く!文学部で学べること
OVERVIEW
文学科フランス文学専修 澤田 直 教授に「文学部で学べること」と題して、インタビューしました。
「フランス文学専修」では、学生に対して「フランス語をきちんと学びましょう」、そして「文学作品を読みましょう」という2本の柱を持って授業を進めています。ただフランス語を学ぶといっても、いわゆる旅行に役立つフランス語とか、そういうものではありません。フランス語という外国語を学ぶことで、フランス的な思考方法や発想を知り、まったく違う世界があることを発見してもらいたいのです。フランス語を学んでいくうちに、日本語でしゃべって日本語で考えているときは常識だと思っていたことが、ひっくり返る瞬間があります。その瞬間を、言葉を通して体験して欲しいのです。
たとえばこんな笑い話があります。よく日本人は「肩が凝る」と言いますが、フランス人は肩が凝りません。なぜなら"肩こり"という言葉がないから。また、フランス語には「いただきます」「ごちそうさま」にあたる言葉がありません。すると「じゃあ食べ終わったとき、どうすればいいのだろう」といった疑問が浮かびます。こういうちょっとした違いから、日頃、自分たちが見て、感じているものとは異なる世界観に気づいてもらえたらいいと思っています。
たとえばこんな笑い話があります。よく日本人は「肩が凝る」と言いますが、フランス人は肩が凝りません。なぜなら"肩こり"という言葉がないから。また、フランス語には「いただきます」「ごちそうさま」にあたる言葉がありません。すると「じゃあ食べ終わったとき、どうすればいいのだろう」といった疑問が浮かびます。こういうちょっとした違いから、日頃、自分たちが見て、感じているものとは異なる世界観に気づいてもらえたらいいと思っています。
もう一つは、フランスの文学作品をもっと読んでほしい。学生は「本を読むのたいへんです」と言いますが、それは違うよと話します。みんなが本を買って読むようになったのは19世紀からで、それ以前は本は高くて手が出ないものだったし、そもそも文字が読めない人も多かった。それでも昔からお芝居や物語、いろいろな形で文学はありました。だから活字を追うことが大切なのではなく、映画でもいいし、お芝居でもいいから、そこにある一つのストーリーや語り方に接して、それが描いている世界観や背景に触れてほしいのです。
またこれも学生に伝えているのですが、誰の心にも、いまの自分とは違う人になりたいという"他者願望"があるはずです。一人の人間の人生で経験できることは限られていますが、小説を読むと、いまの時代だけではなく、遠い時代の、遠い国の、性別まで超えた人たちの人生に触れることができる。こう考えると小説をはじめとする小説を読む作業ってすごく不思議でおもしろい。見ているのは「インクの染み」でしかないのに、没頭していけば、頭の中に自分なりの絶世の美女のイメージが湧いてきたりするじゃないですか。我々が持っているイマジネーションのすごさに気づくことができることも、文学の重要な役割だと考えています。
外国語の話と、文学の話に通じるのは、いままでの自分とは違う、他者の視点に立てるという点です。他者の視点を持つことで、今度はまた自分が見えてくるし、人のことも理解できるようになるでしょう。コミュニケーション能力の向上につながるかもしれない。文学部での学びは、一見すると就職活動には役立たないように感じるかもしれませんが、社会に出る前に時間をかけて、人間を知る、自分を知ることはひじょうに貴重な体験。大学四年間を費やす価値は十分にあります。
外国語の話と、文学の話に通じるのは、いままでの自分とは違う、他者の視点に立てるという点です。他者の視点を持つことで、今度はまた自分が見えてくるし、人のことも理解できるようになるでしょう。コミュニケーション能力の向上につながるかもしれない。文学部での学びは、一見すると就職活動には役立たないように感じるかもしれませんが、社会に出る前に時間をかけて、人間を知る、自分を知ることはひじょうに貴重な体験。大学四年間を費やす価値は十分にあります。
(取材日:2016年12月)