「ドイツ」と聞くと、あなたは何を思い浮かべますか?美しい緑の森と古城、ロマンチック街道やメルヘン街道でしょうか。あるいは、すばらしいクラシック音楽、それとも深遠な哲学や人文科学の伝統でしょうか。むしろ、ナチスという重荷を背負った過去でしょうか。『グリム童話』や、エンデなどのジュニア文学も有名ですね。ゲーテ、ドイツ・ロマン派、カフカなどの詩人や作家はどうでしょう。いや、数多くの日本人選手が活躍しているサッカー・ブンデスリーガ、ベンツやBMWなどの高級車、それともビールやワインでしょうか。
第二次大戦の敗戦国から今日の経済大国にいたる歩みについて、なにかと日本と比較されるのもドイツですね。戦後40年間の冷戦下で東西に分断されてきたドイツは、統一後も、欧州連合(EU)の中核として重要な役割を果しています。また、環境問題に取り組む先進国でもあり、私たちがドイツに学ぶべき点も多いのではないでしょうか。
「ドイツ」といえば、広くはドイツ語圏を指し、スイスの多くの地域やオーストリアもドイツ語圏文化の重要な担い手です。たとえば、名門ハプスブルク家のもとで栄えた華麗なウィーン文化も人気があります。また、現代のドイツ語文学を代表する作家を多く輩出しているのもオーストリアです。
歴史的に見ても、ドイツ文化が中部ヨーロッパ全体に広がっていることや、現在のドイツがヨーロッパのなかで果たしている重要な役割を考えると、ドイツ文化をヨーロッパ全体のなかに位置づけて理解していくことも大切です。
同時に、非西洋文化圏にある日本の視点からドイツ文化を考察することも、私たちにとっては重要です。日本におけるドイツ文化の受容や、ドイツにおける日本像の変遷など、日独の文化関係や文化比較には興味深いテーマがたくさんあります。日本は明治以来の近代化にあたって、ドイツ文化の影響を強く受けてきましたし、ドイツ語圏における日本への関心も一時代前とは比較にならないほど高まり、また刻々と変化しています。ですから、日本についてドイツ語圏の人々に説明できるようになることも大切です。