「文芸」と「思想」ということばは聞いたことがあるけれど、「文芸・思想」という名称は聞いたことがない。創作や批評の実践を志す「文芸」と、生きることの意味や存在の根源について思索する「思想」を「・」でつないで、まるで連続するひとつの学問領域のように扱っている「文芸・思想専修」とは、いったいぜんたい何を学ぶところなのか?そう疑問におもう人が多いのではないでしょうか。
まさにその疑問を内側から壊していくところに、この専修の特徴があるのです。「文芸」といい、「思想」といい、まったく別物のように考えられがちだけれど、はたして「文芸」といわれる実践には、哲学的な思索の営為は入ってこないのでしょうか。むしろ、存在することの意味や、作品を成立させている言語それ自体の働きこそが、「文芸」の根幹をなしているのではないでしょうか。
また、「思想」と呼ばれる領域は、ほんとうに「文芸」とは無関係でしょうか。神話や詩歌、小説を素材にしたり、媒介にして、哲学的思索を深めていない哲学者など、いないのではないでしょうか。とすれば、「文芸」的世界は、「思想」にとっての母胎なのではないでしょうか。
「文芸」と「思想」を横断しながら、思索の羽を自由にはばたかせ、古典から現代にいたるさまざまな思想を学び、同時に自分のことばで書き、ひとに伝えるすべを磨きあげる。それが、この専修で目指されている学びのかたちなのです。