文学部史学科

いま、過去を通して未来を歩む。

学科の特徴

史学科の3専修
史学科は、世界史学専修、日本史学専修、超域文化学専修の3専修で構成されています。特定の文化的価値から自由な立場で、私たちの拠って来たる所=「基層」を深く理解しようと努めます。
学科に入り、専修に進む
入試における史学科の合否判定は、史学科全体で行います。各専修への所属は、2年次に学生が希望する演習によって決定します。専任教員が学習計画を丁寧に指導します。
史学科の特色
異なる歴史を生きた人々の多様な文化に照らして、自らの文化を相対化します。文献的な方法に加えて、文化人類学や地域研究論、さらには文化環境学という新しい学問分野を開拓します。それらの方法論や習熟のために、複数の専門言語・フィールドワークプログラムを用意しています。
理念
我々人間の中には、忽然と地球上に現れて際限なく生き続けるものは誰ひとりとしていません。一人ひとりの生命は広いつながりをもち、かつ、それには限りがあります。また、地球の表面から離れて宙に浮いた状態で生活したり、地球以外の惑星で生活したりするものも存在しません。あらゆる人間は、これまで地球上の自然に働きかけ、そこから得られる生活資糧で生きてきたし、これからもそうするほかないでしょう。
最新鋭のハイテクを駆使した快適な世界に生きるとしても、その例外ではないはずです。人はみな、寿命という時間的制約と地球的空間のなかで生活していかなければならないのです。時間的制約を縦糸とすれば、空間的制約は横糸といえます。
人々の活動は縦糸と横糸の織り成す模様のなかで繰り広げられているといえるでしょう。しかし、空間とは単なる地理的なものではありません。グローバリゼーションが進むなかで、それはむしろ文化的な領域といえるでしょう。その文化が地域・国家・民族を超えて共有と差異をもたらしています。
多様な価値観に照らした相対史的把握、問題究明のための多様な方法論獲得、現代世界における自己定位
この3つは、異なる歴史を生きた人々の多様な文化に照らして、自らの文化を相対化するために必要な課題です。
史学科に学ぶ者は、この課題を真摯に受け止めることで、歴史を学びながら、現代へのまなざしを常に保ち、現代世界における自らの位置づけを歴史的に把握して、多文化的現代社会に関わることを目指します。

教員からひとこと

佐藤 雄基教授 [研究テーマ:日本中世史・近代史学史]

立教の魅力といえば、自由な校風と学問意欲をかきたてる美しく歴史あるキャンパスでしょうか。夜にはゴシックホラーな雰囲気も味わえます。自分で言うのもなんですが、教授陣は世界の第一線で活躍する実力派揃いです。私の研究テーマはユーラシア交流史で、アジアとイスラーム・地中海世界の政治・経済・文化を扱っているので、うちのゼミ生も多彩なテーマで学んでいます。立教の学生は明るく快活なだけでなく、いざという時に普段以上の実力を発揮できる人が多いです。自分が本当にやりたいことを見つけられるよう、様々なことに挑戦してみてください。

今のわたしを作る、この一冊。
同じ本を繰り返し読むことはないのですが、この本は手垢がつくほど読み込みました。この本の一言一句と格闘することで私の学問は形成されました。
新版古文書学入門 佐藤 進一 著
法政大学出版局/2003年3月発行
世界史学専修

21世紀、分かちがたく結ばれた世界。「海域」と「大陸」を軸にその歴史を広く深く洞察します。

「世界史学」とは?
西洋史、東洋史、ヨーロッパ史、アジア史、中国史、アメリカ史…。「世界史」と聞いて、みなさんがイメージするのは、おそらく、このような、現存する地球上の各文化圏や各国の歴史のことであろうと思います。確かに、自然境界に隔てられている文化圏や主要構成民族・政治体制を異にする国の単位で歴史を捉えることは、現代の国や地域、またそこに生きる人々の来歴や拠って立つところを理解しやすくしてくれます。みなさんが高校までで学んできた世界史も、そうした世界各国史、あるいは、文化圏史の集合体としての世界史だったことでしょう。
しかし、現代の制度や思想・信仰の起源、あるいは過去のひとびとの行為や業績、事件について具体的に思い浮かべてみると、そのような世界史のとらえ方では不十分であることがわかります。民主主義思想や世界宗教、植民地支配や官僚制などは、今日それらに拠って立つ国や地域のまとまりの中で独自に誕生し、成長したものではないからです。カエサルのガリア戦争や倭寇などの歴史的な事件・事象も、例えばフランスとか中国といった、今日の特定の国・地域の視点から眺めてしまうと理解のバランスを欠くでしょう。過去においてこの地球に生きた人々は、我々が想像する以上に今日の地域や国の枠を超えて活発に深く交流し、相互に共鳴しつつ歴史を織り上げており、今日の国家や地域のまとまりの色眼鏡で過去を振り返っては、多くの貴重な事実や重要な関連性を見失いかねません。
立教の世界史学-「海域」と「大陸」
それでは、立教大学の史学科で学ぶ「世界史学」とは、どのようなものでしょうか?それは、多少難しく言えば、「歴史上のさまざまな事象の起源・来歴・消長や、それら相互の相関を、海陸を通じたグローバルな交流の脈絡の中に解明しようとする学問分野」ということになります。そうした解明のためには、現代人の価値基準の余計なバイアスから逃れるため、今日の文化的・国家的なまとまりをいったん遠景に置いてみる必要があります。その上で、現代の国境や地域の境界を画する大洋や河川、あるいは山脈や砂漠といった自然的な条件は、専ら、人、モノ、情報の往来を妨げる障壁というよりむしろ、それらを眼前にした人間の好奇心や冒険心を掻き立て、それを越えた先にいる人々との交流を促す経路であった、と考えてみるのです。
「世界」は、少なくとも100年前までは、「海」と「陸」を通じた人々の交流、モノや文化の移動を通じて成り立っていました。100年前からはこれに空が、50年前からは宇宙が、30年前からはサイバー空間が加わりますが、なお、多くの物資や人々、また人々のもつ技能が海路や陸路を通じて地球上を往来しています。欧米や中国、ロシアによるグローバル化の主導権争い、それに対する排他主義やポピュリズム、さらにはパンデミックによる人の移動制限、それでも止まらない物流や情報、というように世界の構造が一昔前とは変わりつつある現在でも、海と陸を介したネットワーク・インフラの重要性は変わるところがありません。むしろ、現実と仮想空間の交錯を経て、その様相はますます複雑化しています。そのようなネットワークは、人類の歴史を通じて成長したり、衰退したり、古いものに置き換わったり、自ら変質したりしました。そうした「世界史」の動態に照らしてこそ、「大陸」と「海域」に生じた、ありとあらゆる歴史的事象・事件の本質が理解されるのです。
「世界史学専修」の教育
世界史学専修では、そのような新しい世界史学を学び、学問的に意味のある卒業論文として結実させるために、世界各地に残された文献史料や物質的遺物資料に直接触れ、それらについての実証的考究を進めることを推奨しています。そのためのツールとして、英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、中国語、朝鮮語といった言語B科目の学習への取り組みを支援することはもちろんですが、そのほかにも、イタリア語やペルシア語、トルコ語、古典漢語、そのほかの言語の基礎を学べるよう、専門基礎科目も用意しています。年度によっては、フィールドワークやゼミ合宿で海外に出かけたりします。ぜひ立教大学で、新しい世界史学に取り組み、他大学や他学部の学生とは一味違った視野と能力を獲得していただければと思います。
日本史学専修

日本史を世界に開かれた目で脱構築し、自分発見の旅に出よう。

大学で学ぶ意義とは?
みなさんのほとんどが、これまで日本史の教科書や参考書などを通して歴史を学んできたはずですね。大学で学ぶ歴史はそれとどのように違うのでしょうか?違いは2つあります。1つは、歴史もまた人が作るものだということを学びます。大学では、歴史そのものとともに、それを先人たちがどのように研究してきたかについても学ぶのです。みなさんに、歴史が作られる現場に立ち会ってもらうためです。講義をしている教員自身が、新たな史実を発見し、独自な学説を唱えている、つまり、新たに歴史を作っていることも少なくないのです。もう1つは、演習やフィールドワークなどで、自分で史料を読み、事件の現場を歩くなどして、実際に歴史を作る営みを追体験します。それはやがてあなた自身の作品、例えば卒業論文などの形で実を結ぶのです。ひょっとしたら、あなた自身が何かの第一発見者になるという幸運に恵まれるかもしれません。
時代を縦軸に、重要テーマを横軸に
日本史学専修のスタッフは、古代・中世・近世・近代・現代と各時代を網羅し、専攻分野も、政治史・経済史・社会史・村落史・国際関係史・女性史・ジェンダー論と、多様です。それによって、日本史の展開を通史的に見通すとともに、現代においても、歴史学においても重要なテーマについて、時代を超えて考えることができるように配慮しています。
1年次にはまず日本史研究の基礎を学びます。論文の読み方、文献の探し方など、歴史研究の基礎、古文書や史科学なども修得できます。
2年次以降は、演習で、史料や文献などの読解を通じて、分析力・構想力を養います。それをサポートするために多様で豊富な講義を準備しており、さらに、歴史の舞台である現地に赴いて調査をするフィールドワークを行ないます。それらの学習・研究の集大成として、4年次には卒業論文を作成することを奨励しています。
人類史の一環としての「日本史」
日本史学専修で学ぶのは、言うまでもなく「日本史」です。しかし、それは人類の悠久の営みの一環としての「日本史」です。原始・古代以来「日本」も「日本人」も、周辺地域の東アジアと深く関わりながら歴史を作ってきました。俗に「島国日本」と言われ、孤立したというイメージが強調されがちですが、古代海は人々の移動と交流を保障する道でもありました。つまり、日本列島上の歴史も文化も、時代によってそのありようは変わりながらも、東アジアや欧米を含む世界との交流のなかで形づくられてきたのです。「日本史」は地球上の歴史と連動しながら形成されたのであり、その意味では、人類史の一環に他なりません。
「日本史」の探求は自分探しの旅
生活の細部にいたるまでグローバル化が浸透し、国際社会で活動する機会が日々増えている現在において、ますます重要になってきているのは、自分が何者であるかということを他者に説明できることです。それは、あなた自身のアイデンティティが厳しく問われるということです。国内においてもそうなのですが、その必要性は、海外に出るとより強く感じられるはずです。しかし、アイデンティティは人から与えられるものでも、楽をして手に入るものでもありません。日本史を学び研究することが、その苦しくもあり、また喜びでもあるあなたの自分探しの旅の支えとなることを願っています。
超域文化学専修

あらたな視点から人類文化史を学ぶ。時の流れ・地域の広がり・心性の傾向を見渡します。

あたらしい観点から世界を見る
現代社会では人の移動も、情報の交換も、文化の変動もめまぐるしくなっている、といわれます。いや、このような様相は、現代社会だけでなく、私たちが生活しているこの人類社会では、地域的にも歴史的にも広く見られた、ともいえます。
人類の文化と社会が、変化が多く多様であるならば、1つの視点だけで社会や人間の全体像を見ることはできません。
超域文化学専修では、日本史学専修、世界史学専修の通時的なものの見方と連動しつつ、歴史学以外の方法も自在に取り入れて、あらたな観点から人間社会を理解することを目指します。
人類文化史を理解するための複数の観点を知り、それらを見渡すことができるような力を、この専修で鍛えていきます。
人文科学的な視点から
あらたな観点とは、(1)文化の基層部分に注目し、(2)相対的な視点で、(3)現代社会との関連から事象を見ようとするものです。
(1)文化の基層部分とは、民族、慣習、社会制度、言語、技術などです。これは、たとえば王国や近代国家ができる以前から存在し、現在でも人びとの生活の多くの部分を特徴づけています。この基層部分は、時代的にも地域的にも、あるいは個人によっても大きく異なっていますが、一方では意外に広い共通性を持っていたりします。
(2)私たちが注目する点に応じて人間社会はさまざまに異なる様相を示します。複数の視点、枠組みを柔軟に使用することを学びます。
(3)(1)の基層部分への注目と(2)の相対的な視点は、私たちが生きている現代社会でさらに必要になっていく力でしょう。現代社会を知るために、時を越えて継続したり、時とは異なる変化軸を持っていたりする事象にも注目していきます。これらの観点も基本は、個別の人間に注目することから発します。均一の人間で構成される社会ではなく、個別の違いを持った人間がいることを前提にした視点を大事にします。個人やミクロの社会への共感を経て、想像力と思考力でよりマクロの社会や時代に迫っていく手法を大事にします。この広い意味での人文科学の方法を大事にしています。
専門をつなぐ授業の中から
スタッフはそれぞれ、以下のような専門をもって教育にあたります。それぞれのスタッフの授業を受講することで、個別の領域を深めると同時に、これらをつなぐ思考を育てていきます。さらには、異なる専門を持つスタッフが共同した合同の研究会などで相互に議論しあう機会も設けます。これらが人類文化史をトータルに理解していくための複眼的で柔軟な視点を育てていくことにつながります。
〈アメリカ社会史〉アメリカは社会や文化の変容が著しいグローバル世界の縮図です。この変化のダイナミクスを研究します。
〈イスラーム複合社会〉巨大な文明と歴史を築いているイスラーム社会と文化を、それと関係する周囲の歴史と文化の中で学びます。
〈文化人類学〉無文字社会やいわゆる未開社会から、いわゆる先進国まで含めた多くの文化を相対的にあつかう視点を学びます。
〈地域研究論〉地域と個人はどのように関係し、個人の中で地域はどのように捉えられているのか、ミクロからマクロまでの枠を自在に扱います。
〈文化環境学〉環境と個人、あるいは環境と人類との接し方を、人間の側から学びます。
〈フォークロア〉私たちの身近にある民俗事象に目を向け、実際に体感しながら日本の文化を学びます。

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