卒論を書こう!先輩の体験談 2022
卒論を書こう!先輩の体験談
2022/07/13
卒論を書こう!先輩の体験談
OVERVIEW
文学部では、卒業論文は必修科目ではありませんが、できるだけ多くのみなさんにその執筆を勧めています。
理由はいくつかありますが、何よりもその経験があなたの人生の大きな財産となるからです。
文学部で人間存在の意味を深く考える作業に取り組んだのですから、是非、皆さんの若き日の到達点を形にして残し、将来の人生を評価する自分の基準を作って欲しいのです。
その思いから今回、優れた卒業論文を執筆した先輩たちの声を集めてみました。どんなテーマに取り組んだのか、また書き終えてどうだったのかなど、参考にしてみてください。
No.01 乗り越えた先に無二の充足感があった
池袋図書館
多様化する学術情報資源と大学図書館 ーパンデミックを経て大学図書館はどう変わり得るかー
教育学科 手島善人さん(文学部100周年記念賞受賞者)
私は教育学を学ぶと同時に、司書課程に所属し図書館情報学を学んできました。加えてテクノロジーの進展と社会の関係にも関心があったため、これら3つの領域を掛け合わせ、「資料のデジタル化と大学図書館」について論点を設定しました。この他、コロナ禍の立教大学図書館実習経験や、大学職員を目指しての就職活動からも着想を得ています。
自分の問題や関心を趣くままに追求し、それを言葉にするために試行錯誤したこと、自己の知的な好奇心に向き合い、そこから生まれた問題意識に対して自分なりの意見が形成できたことは非常にいい経験になり、振り返ればその過程はとても楽しかったです。
卒業論文を執筆しようか少しでも迷っている方は、ひとまず履修だけでもしてみることをおすすめします。執筆が大変であることは否定しませんが、それを乗り越えた先には無二の充足感が待っていますし、書き切ったこと自体が自信にもつながります。
教育学科 手島善人さん(文学部100周年記念賞受賞者)
私は教育学を学ぶと同時に、司書課程に所属し図書館情報学を学んできました。加えてテクノロジーの進展と社会の関係にも関心があったため、これら3つの領域を掛け合わせ、「資料のデジタル化と大学図書館」について論点を設定しました。この他、コロナ禍の立教大学図書館実習経験や、大学職員を目指しての就職活動からも着想を得ています。
自分の問題や関心を趣くままに追求し、それを言葉にするために試行錯誤したこと、自己の知的な好奇心に向き合い、そこから生まれた問題意識に対して自分なりの意見が形成できたことは非常にいい経験になり、振り返ればその過程はとても楽しかったです。
卒業論文を執筆しようか少しでも迷っている方は、ひとまず履修だけでもしてみることをおすすめします。執筆が大変であることは否定しませんが、それを乗り越えた先には無二の充足感が待っていますし、書き切ったこと自体が自信にもつながります。
No.02 卒業制作が大学生活を集大成する良い機会に
プチニコラのぼうけん 〜日本語訳の試み〜
文学科フランス文学専修 杉山栞奈さん(文学部100周年記念賞受賞者)
日本にある国際学校でインターンをしていた際、子どもたちが読んでいたフランス語の絵本に出会い、大学の授業で取り組んだ長文読解とは異なる難しさと面白さが感じられたため、卒業制作での翻訳を決意しました。
細かいニュアンスを汲み取って翻訳を行うため、授業で学んだ文法知識が繋がっていく感覚がありました。また原文を尊重しながら短くテンポのよい訳文をつくるにあたって、日々字幕で海外ドラマを鑑賞していたことも活きました。大学といえば卒論というイメージが強かったので、当初は卒業制作で達成感を得られるか懸念していましたが、知識の再確認とアウトプットをすることで、学んだことを集大成する良い機会になったと感じています。
卒業制作は、日常で得た発見や興味を持ったことをテーマに取り入れやすいと思います。最後の方は校閲や形式の確認に時間がかかる場合があるので、計画的に進めるためにも取り組みたいテーマを早めに決めることをおすすめします。
文学科フランス文学専修 杉山栞奈さん(文学部100周年記念賞受賞者)
日本にある国際学校でインターンをしていた際、子どもたちが読んでいたフランス語の絵本に出会い、大学の授業で取り組んだ長文読解とは異なる難しさと面白さが感じられたため、卒業制作での翻訳を決意しました。
細かいニュアンスを汲み取って翻訳を行うため、授業で学んだ文法知識が繋がっていく感覚がありました。また原文を尊重しながら短くテンポのよい訳文をつくるにあたって、日々字幕で海外ドラマを鑑賞していたことも活きました。大学といえば卒論というイメージが強かったので、当初は卒業制作で達成感を得られるか懸念していましたが、知識の再確認とアウトプットをすることで、学んだことを集大成する良い機会になったと感じています。
卒業制作は、日常で得た発見や興味を持ったことをテーマに取り入れやすいと思います。最後の方は校閲や形式の確認に時間がかかる場合があるので、計画的に進めるためにも取り組みたいテーマを早めに決めることをおすすめします。
No.03 興味関心に合う史料と出会うことが大切
様々な思いが込められた通信は分析するたびに新たな発見があり、研究しがいがありました。
1990年代に不登校を経験した一人物の思想と行動に関する考察 -『はてな』執筆者島内徳子の当事者性とその後に焦点を当てて-
史学科日本史学専修 平嶋孝洋さん(文学部100周年記念賞受賞者)
もともと教育に興味があり、塾講師のアルバイトの経験などから、生徒の目線から教育について論じたいと思っていました。史料を探すなかで、不登校が増加していく1990年代に不登校を経験した生徒が編集した通信を見つけ、分析しようと決めました。
先行研究が少ないこと、そして研究スタイルの新しさに苦心しましたが、史学科での学びの集大成として形に残るものを作ることができて良かったと思っています。とくに自分が興味を持った史料を分析し、歴史学ならではの視点から切り口を探しつつ論じていく作業は、新たな発見がありとても楽しかったです。
また文学を通して感情や経験など自分の内面に目を向けることは、心や思考を豊かにできると感じました。こうして培われた自分らしさは、社会に出ても活かされると思います。
これから執筆予定の方は、自分の興味関心に合う史料を見つけることが大切だと伝えたいです。「これだ!」と思える史料と出会うことができれば、あとは自然と筆が進むのではないかと思います。
※写真に関しては、立教大学共生社会研究センターアーキビストの平野泉さんからご提供いただきました。記して感謝の意を表します。
史学科日本史学専修 平嶋孝洋さん(文学部100周年記念賞受賞者)
もともと教育に興味があり、塾講師のアルバイトの経験などから、生徒の目線から教育について論じたいと思っていました。史料を探すなかで、不登校が増加していく1990年代に不登校を経験した生徒が編集した通信を見つけ、分析しようと決めました。
先行研究が少ないこと、そして研究スタイルの新しさに苦心しましたが、史学科での学びの集大成として形に残るものを作ることができて良かったと思っています。とくに自分が興味を持った史料を分析し、歴史学ならではの視点から切り口を探しつつ論じていく作業は、新たな発見がありとても楽しかったです。
また文学を通して感情や経験など自分の内面に目を向けることは、心や思考を豊かにできると感じました。こうして培われた自分らしさは、社会に出ても活かされると思います。
これから執筆予定の方は、自分の興味関心に合う史料を見つけることが大切だと伝えたいです。「これだ!」と思える史料と出会うことができれば、あとは自然と筆が進むのではないかと思います。
※写真に関しては、立教大学共生社会研究センターアーキビストの平野泉さんからご提供いただきました。記して感謝の意を表します。
史料を探しに、立教大学共生社会研究センターを訪れました。共生研は、どんな資料と出会えるか、資料からどんなことが読み取れるか、そんな期待に満ちた空間に感じました。
静かな空間で興味深い資料と向き合っていく中で、卒論の構想が浮かび上がってきました。
多様な資料の中から「これだ!」という資料に出会えるのも卒論の醍醐味です。
No.04 卒論は4年間何を勉強してきたのか、その証になる
Persuasionに見る女性の主体性とその表出
文学科英米文学専修 飯田咲希さん(文学部100周年記念賞受賞者)
作家Jane Austenの作品では主に私たちと同世代のイギリス中流家庭の女性たちが主人公となり、その人物の結婚までの物語が描かれています。現代と比べて女性の権利が制限されていたイギリスにおいて、Austenが女性作家として女性キャラクターをどのように描いたのかに興味を持ち、当時の女性が守るべきルールや社会的制限に触れながらこの論文を書きました。
とくに難しかったのが構成です。私の論文では序章、第1章、第2章、結論という構成で書いたのですが、執筆の当初はそれぞれの章に繋がりがなく、自分の主張を羅列しがちでした。しかし指導教授のアドバイスをいただきながら、女性の主体性と表出のテーマの下、それぞれの章に繋がりを持たせることができました。
4年間の学びを通して感じた興味や疑問を自分の好きな作品を題材にして論文に書くことができるのは貴重な機会であり、自分が英米文学専修で何を勉強してきたのかという証にもなりました。後輩の皆様にも、大学生活の集大成としてぜひ卒業論文を書いて欲しいと思います。
文学科英米文学専修 飯田咲希さん(文学部100周年記念賞受賞者)
作家Jane Austenの作品では主に私たちと同世代のイギリス中流家庭の女性たちが主人公となり、その人物の結婚までの物語が描かれています。現代と比べて女性の権利が制限されていたイギリスにおいて、Austenが女性作家として女性キャラクターをどのように描いたのかに興味を持ち、当時の女性が守るべきルールや社会的制限に触れながらこの論文を書きました。
とくに難しかったのが構成です。私の論文では序章、第1章、第2章、結論という構成で書いたのですが、執筆の当初はそれぞれの章に繋がりがなく、自分の主張を羅列しがちでした。しかし指導教授のアドバイスをいただきながら、女性の主体性と表出のテーマの下、それぞれの章に繋がりを持たせることができました。
4年間の学びを通して感じた興味や疑問を自分の好きな作品を題材にして論文に書くことができるのは貴重な機会であり、自分が英米文学専修で何を勉強してきたのかという証にもなりました。後輩の皆様にも、大学生活の集大成としてぜひ卒業論文を書いて欲しいと思います。
No.05 外国語で文献を検索することで厚みのある卒業論文に
「高層ビル台北101と台北市街」(筆者撮影)
台湾における新住民の諸相
史学科世界史学専修 山本留菜さん(文学部100周年記念賞受賞者)
文学部として、自分が学んできた4年間のすべてを注ぎ込む経験は、卒業論文でしか行うことのできないもの。もちろん苦しい時もありましたが、努力が形になって完成したときの達成感は得も言われぬものでした。
卒業論文の執筆においては、文献やデータの検索が必要不可欠ですが、日本語で調べるだけではなく、使える言語を積極的に使用した方がより内容に厚みのある卒業論文が製作できると思います。要約部分が理解できると自分にとって必要なものなのか取捨選択できますし、同じ事象を扱っていてもまったく別の観点から捉えている論文が見つかるかもしれません。
卒業論文は、それまで身につけてきた知識や経験すべてを注いで作り上げられるもの。苦しく、険しい過程もありますが、この苦しむ時間は、4年間の大学生活で蓄えた知識を物的に残すことができる貴重な時間でもあると私は思っています。
史学科世界史学専修 山本留菜さん(文学部100周年記念賞受賞者)
文学部として、自分が学んできた4年間のすべてを注ぎ込む経験は、卒業論文でしか行うことのできないもの。もちろん苦しい時もありましたが、努力が形になって完成したときの達成感は得も言われぬものでした。
卒業論文の執筆においては、文献やデータの検索が必要不可欠ですが、日本語で調べるだけではなく、使える言語を積極的に使用した方がより内容に厚みのある卒業論文が製作できると思います。要約部分が理解できると自分にとって必要なものなのか取捨選択できますし、同じ事象を扱っていてもまったく別の観点から捉えている論文が見つかるかもしれません。
卒業論文は、それまで身につけてきた知識や経験すべてを注いで作り上げられるもの。苦しく、険しい過程もありますが、この苦しむ時間は、4年間の大学生活で蓄えた知識を物的に残すことができる貴重な時間でもあると私は思っています。
No.06 卒業論文の執筆が大学生活に大きな意義を与えてくれた
虚実が混淆するアニメーション——今 敏論
文学科文芸・思想専修 岡部希晋さん(文学部100周年記念賞受賞者)
元々サブカルチャー批評に興味があって文芸思想専修に進学したこともあり、集大成である卒業論文ではアニメ批評を書こうと決めていました。そこで私が大学時代に出会い、アニメーション表現に深く感銘を受けたアニメ作家であり、かつ研究の余地がある今 敏を題材にした作家論を執筆することにしました。
今 敏研究はまだ発展途中です。それゆえに先行研究が少なく、論の道筋を考えることや参考文献の選択には苦心しました。また研究範囲の拡大に伴って散乱してしまった分析や考察の数々を一つの論にまとめる作業も並々ならぬ苦労がありました。しかし文芸思想専修で培った読解力・思考力・文章力を総動員し、最終的に自らの施行をアウトプットできたという結果が、私の大学生活に大きな意義を与えてくれたように思います。
文学部は学科専修に関係なく、自分の好きな授業を受けることができる柔軟なカリキュラムを有する学部です。自身の興味の赴くままに横断した幅広い学問の数々は、卒業論文を執筆にあたり、多角的な視点を与えてくれました。
文学科文芸・思想専修 岡部希晋さん(文学部100周年記念賞受賞者)
元々サブカルチャー批評に興味があって文芸思想専修に進学したこともあり、集大成である卒業論文ではアニメ批評を書こうと決めていました。そこで私が大学時代に出会い、アニメーション表現に深く感銘を受けたアニメ作家であり、かつ研究の余地がある今 敏を題材にした作家論を執筆することにしました。
今 敏研究はまだ発展途中です。それゆえに先行研究が少なく、論の道筋を考えることや参考文献の選択には苦心しました。また研究範囲の拡大に伴って散乱してしまった分析や考察の数々を一つの論にまとめる作業も並々ならぬ苦労がありました。しかし文芸思想専修で培った読解力・思考力・文章力を総動員し、最終的に自らの施行をアウトプットできたという結果が、私の大学生活に大きな意義を与えてくれたように思います。
文学部は学科専修に関係なく、自分の好きな授業を受けることができる柔軟なカリキュラムを有する学部です。自身の興味の赴くままに横断した幅広い学問の数々は、卒業論文を執筆にあたり、多角的な視点を与えてくれました。
No.07 自分を成長させてくれた豊島区に恩返しを
豊島区の保育サービスの変遷と課題 —住民、行政、保育士への聞き取りからー
史学科超域文化専修 根岸優多さん(文学部100周年記念賞受賞者)
1、2年次の2年間で入門演習、フィールドワーク方法論、全カリのRSL科目と、3度も池袋を調査する機会に恵まれました。そして自分の研究テーマを考えなければならない3年時にコロナ禍に。図書館の使用も利用できないという状況下、私が頼れるのはこれまでに調査してきた豊島区のご縁くらいでした。そこで豊島区の保育サービスについて自分の目で実態を検証したいという構図を思いつき、卒業論文のテーマが定まっていきました。
積み重ねてきた努力と学びの成果を卒業論文という形で残せたことをとてもうれしく思っています。振り返ってみると私の卒業論文は、豊島区や池袋、立教大学で過ごしたこれまでの経験があったからこそ、書き上げることができたもの。このたび、豊島区を取り上げた卒業論文を書くことで、立教、そして池袋という場所に私なりのやり方でひとつ恩を返すことができたと感じています。
粘り強く考えぬくこと、確かな根拠をもとに主張を組み立てること、他者に伝わるようにまとめ上げることなど、卒業論文執筆を通して得られた経験は、これからの人生に役立つものばかりです。
史学科超域文化専修 根岸優多さん(文学部100周年記念賞受賞者)
1、2年次の2年間で入門演習、フィールドワーク方法論、全カリのRSL科目と、3度も池袋を調査する機会に恵まれました。そして自分の研究テーマを考えなければならない3年時にコロナ禍に。図書館の使用も利用できないという状況下、私が頼れるのはこれまでに調査してきた豊島区のご縁くらいでした。そこで豊島区の保育サービスについて自分の目で実態を検証したいという構図を思いつき、卒業論文のテーマが定まっていきました。
積み重ねてきた努力と学びの成果を卒業論文という形で残せたことをとてもうれしく思っています。振り返ってみると私の卒業論文は、豊島区や池袋、立教大学で過ごしたこれまでの経験があったからこそ、書き上げることができたもの。このたび、豊島区を取り上げた卒業論文を書くことで、立教、そして池袋という場所に私なりのやり方でひとつ恩を返すことができたと感じています。
粘り強く考えぬくこと、確かな根拠をもとに主張を組み立てること、他者に伝わるようにまとめ上げることなど、卒業論文執筆を通して得られた経験は、これからの人生に役立つものばかりです。
保育施設立地の変化(2016年/2021年)
No.08 授業で積み上げてきた学びの大切さを実感
ドイツの博物館・美術館における出自調査(Provenienzforschung) —なぜ今、展示品の出自が問われるのか—
文学科ドイツ文学専修 佐々木蕗子さん(文学部100周年記念賞受賞者)
卒業論文執筆のちょうど1年前に、ドイツの旧植民地から略奪されたものがドイツの博物館・美術館に多く収蔵されていること、その収蔵品の返還が近年話題になっていることを教授から聞きました。それをきっかけに出自調査に興味を持って調べるようになり、まだ日本語で論文が出ていなかったこと、そして不安定な現代の国際社会と向き合っていくうえでとても意義深いと考え、このテーマで執筆しようと決めました。
1年生の頃、ドイツに関する授業を受けながら「この学びが何に繋がるのだろう?」と卒業後の進路が不安になることがしばしばあったのですが、卒業論文の執筆にあたってドイツ語の資料を読み込んだり、これまでの授業で得た視点を基に意見を書くうちに、大学生活で積み上げてきた学びを実感することができました。
テーマにもよりますが、参考資料に外国語のものを用いる際は、辞書やネット上の翻訳サービスを使いつつ、なるべく自力で読むことをおすすめします。翻訳本だけでは、最新の情報はつかみきれないですし、腑に落ちないこともあるかと思います。自分で読むことで、テーマに付随するキーワードを知り、より多角的な情報の収集に役立ちますし、語学力の向上にも繋がります。
文学科ドイツ文学専修 佐々木蕗子さん(文学部100周年記念賞受賞者)
卒業論文執筆のちょうど1年前に、ドイツの旧植民地から略奪されたものがドイツの博物館・美術館に多く収蔵されていること、その収蔵品の返還が近年話題になっていることを教授から聞きました。それをきっかけに出自調査に興味を持って調べるようになり、まだ日本語で論文が出ていなかったこと、そして不安定な現代の国際社会と向き合っていくうえでとても意義深いと考え、このテーマで執筆しようと決めました。
1年生の頃、ドイツに関する授業を受けながら「この学びが何に繋がるのだろう?」と卒業後の進路が不安になることがしばしばあったのですが、卒業論文の執筆にあたってドイツ語の資料を読み込んだり、これまでの授業で得た視点を基に意見を書くうちに、大学生活で積み上げてきた学びを実感することができました。
テーマにもよりますが、参考資料に外国語のものを用いる際は、辞書やネット上の翻訳サービスを使いつつ、なるべく自力で読むことをおすすめします。翻訳本だけでは、最新の情報はつかみきれないですし、腑に落ちないこともあるかと思います。自分で読むことで、テーマに付随するキーワードを知り、より多角的な情報の収集に役立ちますし、語学力の向上にも繋がります。
No.09 卒業論文の執筆を通してついた自信は一生もの
夕顔巻の物の怪の正体についての考察
文学科日本文学専修 森川菜々子さん(文学部100周年記念賞受賞者)
源氏物語の演習を受けるなかで、たまたま自分の担当箇所になったのが夕顔巻の物の怪の登場シーンでした。この物の怪の正体について先行研究でいくつか説が分かれていましたが、どれも自分の納得するものではなかったため、自分独自の説を立ち上げてみたいとこのテーマを選びました。
苦労した点は、先行研究が多すぎたことです。新しい説を立証しようとしていたため、テーマについて過去のすべての説を調べる必要があり、かなりの時間を要しました。しかしここに時間をかけたことで自分の説を客観的に見ることができたり、参考にできる考察を見つけたりとメリットも多かったので、丁寧に調べて良かったなと思っています。
卒業論文を書くときは、できるだけ自分の意見を取り入れるべきです。大学に入った当初は、私の意見や考察はありきたりなものだと思い込んでいました。しかし卒業論文を書き、担当教授に自分の研究を評価してもらえたことで、「自分にしかできないことがある」と自信を持つことができました。この自信は一生ものだと思っています。
文学科日本文学専修 森川菜々子さん(文学部100周年記念賞受賞者)
源氏物語の演習を受けるなかで、たまたま自分の担当箇所になったのが夕顔巻の物の怪の登場シーンでした。この物の怪の正体について先行研究でいくつか説が分かれていましたが、どれも自分の納得するものではなかったため、自分独自の説を立ち上げてみたいとこのテーマを選びました。
苦労した点は、先行研究が多すぎたことです。新しい説を立証しようとしていたため、テーマについて過去のすべての説を調べる必要があり、かなりの時間を要しました。しかしここに時間をかけたことで自分の説を客観的に見ることができたり、参考にできる考察を見つけたりとメリットも多かったので、丁寧に調べて良かったなと思っています。
卒業論文を書くときは、できるだけ自分の意見を取り入れるべきです。大学に入った当初は、私の意見や考察はありきたりなものだと思い込んでいました。しかし卒業論文を書き、担当教授に自分の研究を評価してもらえたことで、「自分にしかできないことがある」と自信を持つことができました。この自信は一生ものだと思っています。
No.10 「書きたい」という気持ちが少しでもあるのなら挑戦を!
キース・へリング《オルターピース:キリストの生涯》—31年間の人生を踏まえて—
キリスト教学科 石井真紀奈さん(文学部100周年記念賞受賞者)
私の興味は、美術史のなかでも抽象化された形によって作者の思想が表現される現代アートにありました。現代アートとキリスト教というと、一見かけ離れたイメージを持ちますが、私はあえてそれらの接点について考察したいと考えました。調査を進めるうちにキース・へリング《オルターピース:キリストの生涯》(1990年)という作品と出会い、これについて彼の生涯を振り返りながら、造形、キリスト教、ニューヨーク、死、など様々な角度から研究し、最終的に本作の解釈を行いました。
卒業論文の執筆を通してもっとも身についたのは批判的思考力です。すでになされている解釈や概要書を鵜呑みにするのではなく、「この解釈に至る糸口はどこにあるのか」「さらにどんな角度から解釈できるのか」などを検討することによって自分の考えを導き出せるようになりました。他にも執筆や発表を通じて、主体性や計画力、プレゼンテーション力など社会で役立つ力も身についたと思います。
卒業論文は学生生活を締めくくるプロジェクト。「書きたい」という気持ちが少しでもあるのなら、まずは挑戦してみるのが良いと思います。やると決めた前向きで志のある学生であれば、教授は手厚くサポートしてくださいますから、ぜひ楽しんで取り組んでいただければと思います。
キリスト教学科 石井真紀奈さん(文学部100周年記念賞受賞者)
私の興味は、美術史のなかでも抽象化された形によって作者の思想が表現される現代アートにありました。現代アートとキリスト教というと、一見かけ離れたイメージを持ちますが、私はあえてそれらの接点について考察したいと考えました。調査を進めるうちにキース・へリング《オルターピース:キリストの生涯》(1990年)という作品と出会い、これについて彼の生涯を振り返りながら、造形、キリスト教、ニューヨーク、死、など様々な角度から研究し、最終的に本作の解釈を行いました。
卒業論文の執筆を通してもっとも身についたのは批判的思考力です。すでになされている解釈や概要書を鵜呑みにするのではなく、「この解釈に至る糸口はどこにあるのか」「さらにどんな角度から解釈できるのか」などを検討することによって自分の考えを導き出せるようになりました。他にも執筆や発表を通じて、主体性や計画力、プレゼンテーション力など社会で役立つ力も身についたと思います。
卒業論文は学生生活を締めくくるプロジェクト。「書きたい」という気持ちが少しでもあるのなら、まずは挑戦してみるのが良いと思います。やると決めた前向きで志のある学生であれば、教授は手厚くサポートしてくださいますから、ぜひ楽しんで取り組んでいただければと思います。