卒論を書こう!先輩の体験談 2021

卒論を書こう!先輩の体験談

2021/06/12

卒論を書こう!先輩の体験談

OVERVIEW

文学部では、卒業論文は必修科目ではありませんが、できるだけ多くのみなさんにその執筆を勧めています。
理由はいくつかありますが、何よりもその経験があなたの人生の大きな財産となるからです。
文学部で人間存在の意味を深く考える作業に取り組んだのですから、是非、皆さんの若き日の到達点を形にして残し、将来の人生を評価する自分の基準を作って欲しいのです。
その思いから今回、優れた卒業論文を執筆した先輩たちの声を集めてみました。どんなテーマに取り組んだのか、また書き終えてどうだったのかなど、参考にしてみてください。

No.01 卒業論文の執筆が今後さらに学ぶ意欲と行動に繋がった

グイド・レーニ《洗礼者ヨハネの首を持つサロメ》作品研究
キリスト教学科 荒井美月 さん(文学部100周年記念賞受賞者)

「キリスト教美術」の授業のなかで、洗礼者ヨハネの生々しい生首を持った美女サロメ、という不思議な取り合わせの主題に興味を持ちました。概要を調べているうちに、この主題が中世から近代に流行ったことを知り、なぜ当時の画家たちがこの主題に取り組んだのかが気になるように。その理由を考察するため、他の画家に比べて特殊な構図を用いて描いたイタリアのバロック期の画家グイド・レーニに着目し、研究することにしました。

これまでたびたび「キリスト教学科で何を勉強するのか」と聞かれてきましたが、範囲が広いため毎回答えるのが難しいと感じていました。しかし卒業論文を執筆したことで、キリスト教学科での学びについて、自信を持って答えられるようになりました。同時に、私の研究したことは、キリスト教美術史のなかではほんの一部であることを思い知ったので、卒論をきっかけに今後も知識を広げる意欲や行動に繋がると思っています。好きなことを深めることができ、知識も増え、卒業論文の執筆は私にとって良いことづくめでした。

これまで論文を書いたことがなくてペースがつかめず、11月に焦って執筆をすることになってしまったのが反省点です。夏休みから9月頃にかけて参考文献のコピーを取り、参考文献表を作っておくと、その後は執筆に集中できたと思うので、今後、執筆される方は参考にしていただければ幸いです。とくに私のように論文の執筆に慣れていない人は、早めに執筆に着手し、論述に悩んだときに先生に面談をお願いできるくらいの余裕を持って進めるのがベストだと思います。

No.02 卒業論文には大学4年間の学び、経験がすべて活かされる

Beyond Social Norms: Women’s Independence and Sexuality in Lillian Hellman’s The Children’s Hour
文学科 英米文学専修 浅野萌奈 さん(文学部100周年記念賞受賞者)

リリアン・ヘルマンの『子供の時間』における女性と性の在り方について論じました。同性愛の主体を取り上げることがタブー視されていた時代のアメリカで、異性愛を正しい性の在り方とみなす社会に立ち向かい、新たな価値観を提示しようとしたのではと考えたのです。

執筆ではオリジナリティーを出すのに苦労しました。自分の独創性をどうやって出せばいいのか分からず、またコロナ禍で気軽に気分転換ができなかったことも加わり、煮詰まってしまう場面も多かったです。教授にいろいろと助言をいただき、何とか書き上げることができた今は、卒業論文が大学4年間で興味を持って学んできたことの集大成になったと思っています。大学2年で参加した「ケンブリッジサマープログラム」で英語論文を書いた経験や、アメリカ演劇の演習に参加したこと、劇場に足を運ぶようになったことなど、すべてが活きているように感じています。

私の場合、応援していた役者がアメリカの演劇作品の主演を務めたことがきっかけで、戯曲や演劇に強く惹かれていきました。個人的に好きなことが思わぬきっかけで学びに繋がることもあるので、大学の授業はもちろんですが、プライベートな興味や趣味も、ぜひ大切にして欲しいと思います。

No.03 卒業論文の執筆時は図書館を最大限に活用すること

鄭観応『南遊日記』における『公会』構想について
史学科 世界史専修 澁谷健太 さん(文学部100周年記念賞受賞者)

清朝の人物による東南アジアへの渡航記を史料として扱いたいと思っていたところ、鄭観応『南遊日記』が見つかりました。鄭観応がこの日記で提唱した「公会」構想について、新たな国際関係構想として研究した先行研究はありましたが、私は「公会」構想を清仏戦争のコンテクストに位置付ける観点から再考を行いました。

当初は東南アジア現地の当時の状況をめぐる通説と、鄭観応が見た東南アジアを比較しようと考えていましたが、なかなかふさわしい文献を見つけることができず、苦労しました。

卒業論文を書き上げた今、こんにちの視点ではなく、なるべく当時の文脈を重視して研究を行う歴史学的なアプローチを実践し、ある程度目的を果たせたことをうれしく思っています。海域史をはじめ、中国王朝の朝貢認識、中国—東南アジア関係、華僑華人、東西交流史など、私がこれまで立教大学で学んできた様々な分野に関係する史料に運よく出会うことができ、またその史料を自分なりにうまく活かすことができました。

卒業論文を執筆する人へのアドバイスとしては、図書館を最大限活用してください。本は注文すると作品によっては図書館に置いてくれますし、その他、参考図書コーナーやオンラインベースなども積極的に活用を。またレファレンスカウンターに相談してみるのもおすすめです。

No.04 卒論は達成感以上のものを与えてくれる生涯の大きな節目であり通過点

仲間と励まし合いながら卒業論文を書いた日々は一生の思い出に 十五世紀の土倉と公方御倉
史学科 日本史学専修 林悠吾 さん(文学部100周年記念賞受賞者)

ゼミで読み込む古記録をより理解するために、桜井英治の「室町人の精神」を読みました。その後、桜井氏の論文を読むなかで、桜井氏のように経済の面から研究するのもおもしろそうだと感じるように。歴史がとくに好きではない私にとって、経済からの視点は魅力的に感じたのです。また教師を目指していたため、教科書で出る用語のひとつ「土倉」に注目しました。

私が卒業論文を執筆して良かったと感じているのは、大学で学習したという証ができたことと、卒論仲間ができたことです。友達と励まし合いながら卒論を書き進めた経験は、一生の思い出になるはず。また教員を希望する人は、先輩教員から「卒論は何について書いたの?」と尋ねられることも多いので、書いておくことをお勧めします。

No.05 研究テーマに悩んだときは学科・ゼミの領域から離れる勇気を

オタク文化とフェミニズムとAセクシュアル・クィアの共鳴可能性—身近なものから性をクィアするために—
史学科 超域文化学専修 井村麗奈 さん(文学部100周年記念賞受賞者)

卒業論文では、一画的な関係が周知されることで、想像することが難しくなってしまう多様な関係を扱いたいと考えていました。ゼミで学んだ歴史学の領域からは離れてしまうものの、自身の関心を最優先に、オタク文化、フェミニズム、Aセクシャル、クィア理論をキーワードに決めました。

この通り、私にとって重要なのは領域や研究対象ではなく、姿勢や視点の持ち方だったため、テーマ選びには苦労しました。テーマを選ぶのに半年ほどかかったと記憶しています。同時に先行研究を知らない人が読んでも分かる文章を書くことにも苦労しました。指摘されても何が難しいのか分かなかったことも。書き手と読み手の間にある溝を埋める作業には相当、時間をかけました。

ただ苦労した分、「おもしろかった」「わかりやすかった」といてもらえたときの達成感はひとしお。対話をあきらめなくて良かったと心から思いました。

卒業論文をこれから書く人は、卒論や進路で手一杯のなかでも、なるべくなら4年次にいくつか講義を履修しておくと良いと思います。私は講義から、自分では気づかなかった文献や繋がり、研究展開の可能性に出会うことができました。もうひとつのアドバイスは、領域から離れるのを恐れないこと。私自身は、ゼミで学んできた領域と異なっていますが、自分が関心を持って書き上げることができた研究テーマと出会えたことに満足しています。研究テーマで悩んだときは、学科やゼミの領域から一度離れて、自分の関心についてとことん考えてみることも有効だと思います。

No.06 興味を徹底的に突き詰める卒業論文は大学で学ぶ醍醐味

ゴシック大聖堂空間におけるステンドグラスの意義—光と色彩から大聖堂空間を紐解く—
文学科 ドイツ文学専修 森田樹奈 さん(文学部100周年記念賞受賞者)

かねてよりヨーロッパの景観、西洋建築が好きで興味を持っていました。ゴシック大聖堂建築について調べるなかで、建築学のみならず多角的なアプローチができないかと考えるようになり、ステンドグラスに着目。一般的にステンドグラスは描かれた「絵」を通して普及するものと言われていますが、一方で同様の機能を持つ壁画になぜ取って代わったのか、疑問を抱いたためです。そこで大聖堂空間を新たな観点から捉え直すべく、卒業論文で取り扱うことを決めました。

苦労したのは卒業論文としてのオリジナリティーの追求です。私の論文は自分の意見の部分が薄く、先行研究の羅列になりがちで、ゼミの先生から幾度かご指摘をいただきました。自分の意見や考えを絡めながら、自分にしか書けない論文をいかに作り上げるかが、執筆中はつねに課題でした。

試行錯誤を重ねるなか、改めて文章の書き方をしっかりと学ぶことができたのは非常に有意義なことでした。「人に読んでもらう」を意識して文章を作成した経験は、今後、社会に出た際にも活かすことができるもっとも大きな学びだと実感しています。

これから卒業論文を書く人は、資料集めを早い時期から取り組んでおくことをお勧めします。ざっくりで良いので研究したい分野を決めておき、関連した資料を読み込んでいくことで、具体的なテーマを選ぶ際の切り口を広げることができます。何より執筆に必要な背景知識を早めに固めることで、制作への移行がスムーズになると思います。

No.07 卒業制作は心のしなやかさを培う素晴らしい機会

風刺新聞 Le Gorafiと巡る北西フランスーアイロニーの仏文和訳—
文学科 フランス文学専修 保田美佳 さん(文学部100周年記念賞受賞者)

フランスへ派遣留学した際、大学の最寄りの書店の「とにかく笑える本」というコーナーに陳列されていた一冊の本が目に留まり、フランス人が考えるおもしろい本とはどんなものだろうと興味を持ちました。その本が「フェイクニュースや社会風刺を織り交ぜた地方フランス案内」。結果的にはこの本が卒業制作(翻訳)に打ってつけの題材になりました。

未訳のフランス語著作を地道に翻訳し、日本語を一語ずつ磨き文章を練り上げ、最終的にひとつの作品として発表する卒業制作は、自分の内面と闘いながら心のしなやかさを培うことに繋がり、同時に新たな知の領域を自らの手で切り拓く貴重な機会ともなりました。

フェイクニュースの事実確認には想像よりも時間がかかりました。最新のニュースを把握する必要があったため、主にオンラインのLe Figaro紙やLe Monde紙を日々チェック。また教科書や小説には無い砕けた文体が新鮮に感じられた一方で、日本語にするのが困難な箇所も多々あり、スラング等に対応するためオンライン辞書やSNSも取り入れて調査を進めました。

大学での学びを作品として残したい人や、自分の語学力を試してみたい人は、ぜひ卒業制作(翻訳)に挑戦していただきたいと思います。心に余裕を持って完成させるために、できることなら秋学期前から翻訳作業を開始することをお勧めします。

No.08 卒業論文を通じて得た経験は物事を考えるうえでの土台になる

システム化する渋谷—2010年代以降の渋谷再開発事業を考察する—
文学科文芸 思想専修 橋本佳歩 さん(文学部100周年記念賞受賞者)

街歩きが好きで、なかでも行くたびに変化のめまぐるしい渋谷という場所に興味を抱きました。かつての渋谷は若者の街・文化の発信地というイメージが強かったですが、現在進行中の再開発事業では、それらと相反するような整備が行われているように感じます。再開発が街の「個性」にどのような影響を与えるのだろうかという疑問から、このテーマで研究を始めました。

私が所属していた文芸・思想専修では、知識的な面だけでなく、物事の考え方や批評の仕方、文章に表す方法など、「学ぶ」こと自体を学ぶ機会が多くありました。そうした様々な方法を、卒業論文を執筆するプロセスの中で実践し、自分のものにできた点が良かったです。自分から何かに関心を持ち、研究し、筋道を立てて論の流れをつくる一連の経験は、今度の人生において物事を考えるうえでの土台になると思います。

文章の構成に必要なのは論理ですが、論理を組み立てるモチベーションになるのは、「これを言いたい」という感情だと個人的に考えています。私の場合、スタートは「好きな街が嫌いな場所になったら嫌だな」という素朴な感情でした。自分が最終的に何を主張したいのかを常に念頭に置きながら作っていくと、芯のある卒業論文になると思います。

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