卒論を書こう!先輩の体験談 2018

卒論を書こう!先輩の体験談

2018/04/01

卒論を書こう!先輩の体験談

OVERVIEW

文学部では、卒業論文を必修科目にしていません。必修化にはどうしても弊害が伴うからです。ですが、できれば自主的に前向きに執筆して欲しいですし、文学部はそうすることを強く勧めています。
理由はいくつかありますが、いちばんは、その経験があなたの財産となるからです。文学部で人間存在の意味を深く考える作業に取り組んだのですから、是非、皆さんの若き日の到達点を形にして残し、将来の人生を評価する自分の基準を作って欲しいのです。
その思いから今回、優れた卒業論文を執筆した先輩たちの声を集めてみました。どんなテーマに取り組んだのか、また書き終えてどうだったのかなど、参考にしてみてください。

No.01 自ら問題を設定し先行研究と対話する

「ヨナ書」が描く預言者像 ——ヨナは否定的に描かれているのか——
キリスト教学科 長井 隆児 さん

旧約聖書学の授業でヨナ書に関するレポートを書いたことを機に、ヨナ書に興味を持ちました。ヨナ書には一見模範的とは言い難い預言者ヨナが登場しますが、この書物はユダヤ教の旧約聖書の区分において「預言者(ネビーム)」に位置づけられたため、ヨナは真正の預言者として理解されてきました。卒論テーマにヨナ書を選んだのは、その理由を知りたかったからです。

卒論執筆を通じて、大学ならではの学びを実感できました。自分で問題を設定し、先行研究と対話しながら自らの主張を論理的に書く。覚えるだけの勉強とは違う“創造的な学び”を経験することができて非常に楽しかったです。

一方、説得力ある主張を行うことには苦労しました。意見を書くのではなく、明確に根拠を示さなければいけないと頭では理解していても、実際に書いてみると根拠が乏しい文章になってしまうことがありました。

卒論に取り組む人には、早い段階で先生に見ていただくことをお勧めします。時間的に余裕がある状態である程度のものができていれば、具体的なアドバイスをいただいて修正する時間も確保できます。私も先生の親身な御指導があったからこそ、充分な修正を加えて仕上げることができたと感謝しています。

No.02 想像力と説得力を生かす卒論執筆経験は社会人になっても必ず生かされる

『マイ・アントニーア』が提示するフェミニズムの可能性 ~創造する手の表象から~
文学科 英米文学専修 奥村 奈緒美 さん

私は、アメリカを代表する作家ウィラ・キャザーが開拓時代の女性の生き方を描いた『マイ・アントニーア』におけるフェミニズムをテーマに卒論を書きました。

私はあまり切り替えが上手なタイプではないため、特に秋以降から提出日までは常に卒論のことが頭にあり、自分自身が納得できるものにしたいという思いからプレッシャーを感じることも多かったです。ですが、卒論を執筆することを通じて、大学4年間の学びを体系的に整理し、自信を持って大学での成果を形にすることができたことはとても良い経験となったと思っています。演習の授業や文学概論の授業ももちろん楽しかったのですが、指導教授の時間をいただいてディスカッションできる卒業論文演習は非常に貴重な時間でした。

文学部での学びが、将来役に立つのかと不安に感じる学生もいるかと思いますが、文学を通じて様々な立場・時代の人間に対し深い想像力を働かせ、作品中の文章という確固としたデータを用いて、効果的な文章表現で読み手を説得させる論文を書く活動は、社会人になっても必ず生かされると考えています。是非多くの学生にチャレンジして欲しいです。

No.03 自分が一番興味のある分野で、自分にしか書けない論文を

『ボヴァリー夫人における感覚世界 ——においと微粒子を手掛かりに——』
文学科 フランス文学専修 梅崎 紫乃 さん

『ボヴァリー夫人』を読んだ時、ストーリーや構成の巧みさよりも登場人物の感性がとても繊細に描かれていることが強く印象に残りました。そして、実体として捉えにくい感覚的なものがいかに言語化されているか、それらが物語全体にどのような効果・影響を与えているかを分析してみたいと思い、この作品を対象に卒論を書くことを決めました。「においと微粒子」を論の中心に据えたのは、甘美な香りが漂う姦通の場面、何かのにおいを嗅いだり土埃を見たりして昔のことを懐かしく思い出す場面が特に興味深かったからです。

卒論を書くことで、作品や文献を「読む」だけでなく、それらを自分の中に取り込んで文章を「書く」ことで作品をより深く理解できたことに加え、自分の関心や主張を客観的に見つめ直すことができました。

テーマが感覚的なものだったということもあり、研究から得られたものをどう伝えるかを考えるのに苦労しました。また、自分の文章や言葉が適切であるかを見直す時間も多くかかり、追い込みの時期は毎日印刷してペンを入れ、国語辞典や類語辞典を引いて、自分の主張が最も伝わる言い方を常に考えました。

卒論を書く人はこまめに指導教授に見ていただき、「この章のここが行き詰まっていて、自分ではこう考えているのだけどどうまとめたらいいか」というように具体的な相談ができると良いと思います。「誰よりも面白いテーマで書いている」という自信が執筆作業の支えになることもあります。皆さんも自分が一番興味のある分野で自分にしか書けない論文を完成させてほしいと思います。

No.04 卒論は大学4年間を見つめ直すことができる貴重な機会

『人間椅子』論 ——享受者を〈鑑賞〉する作り手・江戸川乱歩——
文学科 日本文学専修 入山 洸希 さん

デビューして間もない江戸川乱歩の作品の中で、当時の探偵小説の主な発表の場であった雑誌「新青年」ではなく、大衆娯楽雑誌「苦楽」に発表された『人間椅子』の特異性を論証することを目的として、卒論を執筆しました。

卒論は通常のレポート等とは異なり、文字数が多く、内容としても高い水準のものが求められるため、自分自身と向き合う時間が長く、作業を通じて自分の興味や考えを客観視することができるようになったと思います。

実際に卒論を執筆してみると、自分が何について論じているかという軸がぶれることがありました。書きながら論文全体を貫く問題意識を常に持ち続ける必要があることに気づかされ、その点では苦労しました。

卒論を書く人へのアドバイスとしては、同じ指導教授の学生など、力を貸してくれる人を早めに見つけておくことをお勧めします。卒論を執筆する時は一人ですが、困った時や行き詰まった時に相談することができ、リフレッシュできると思います。

卒論は大学4年間を見つめ直すことができる貴重な機会です。是非みなさんも執筆しましょう。

No.05 大学4年間で学んだ全てのスキルを使って執筆することができた

1972年から1979年の高島平団地自治会の公団家賃値上げ反対運動に対する姿勢の変化についての考察
史学科 日本史学専修 M・C さん

私が高島平団地自治会の取り組みを卒論テーマとして選んだ理由は、この時代の多くの人の住宅を担った公団の最大勢力である公団自治協の直面した最長かつ最重要の課題でありながら、これまで研究した人が全くいなかったことを知ったからです。

研究で特に苦労したのは、先行文献がなかったことや資料が個人所蔵で公開されていなかった点です。先方に連絡を取り、都合を伺いながら資料を集めるのにとても時間がかかってしまったため、時間の管理が大変でした。

最終的に卒論という形で研究をまとめることができ、自分が大学の4年間でやってきたことに対して、1つの区切りをつけることができたと満足しています。また、論の立て方、資料の探し方など全てにおいて、4年間で学んだことのすべてのスキルを使うような論文となりました。

卒論に取り組む人へアドバイスをするとしたら、最初に全体の見通しを立てようとするより、まずは資料整理をしてどこまで結論をつめられるかを考えた方が結果的に効率よく作業を進められる、ということを伝えたいと思います。

No.06 自分の興味と自分に向いている研究方法を踏まえてテーマを決定しよう

在日ムスリム留学生の食選択 ~立教大学を事例として~
史学科 超域文化学専修 O・Y さん

私が在日ムスリム留学生の食選択を卒論のテーマにしたのは、ゼミでイスラームを勉強するうちにムスリムの中にも様々なタイプの人がいることを知り、「なぜ同じ宗教を信仰しているのに宗教観や宗教実践にばらつきが生まれるのか」について興味を持ったのがきっかけです。特に食に焦点を当てたのは、イスラームの中でも食についてなら私でも理解しやすいと考えたからです。

私は文献を読んで難しい考察をすることが苦手だったこともあり、研究方法として当事者に直接会って生の意見を聞けるインタビューに挑戦してみることにしました。協力者を見つけるのに時間がかかったり、相手によってはインタビューを自信のない英語で行う必要があったりなど苦労はしましたが、このテーマでインタビューをしなければ出会えなかったたくさんの方と話すことができたことに感謝しています。

論文として完成した時は、今まで自分がゼミなどで学んできたことの集大成となったという達成感を覚えました。

卒論執筆はもちろん大変でしたが、私は結構楽しみながらインタビューをしたり文章を書いたりすることができました。自分の興味と自分に向いている研究方法を踏まえてテーマを決定したのが良かったのだと思っています。

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