卒論を書こう!先輩の体験談 2019

卒論を書こう!先輩の体験談

2019/04/01

卒論を書こう!先輩の体験談

OVERVIEW

文学部では、卒業論文を必修科目にしていません。必修化にはどうしても弊害が伴うからです。ですが、できれば自主的に前向きに執筆して欲しいですし、文学部はそうすることを強く勧めています。
理由はいくつかありますが、いちばんは、その経験があなたの財産となるからです。文学部で人間存在の意味を深く考える作業に取り組んだのですから、是非、皆さんの若き日の到達点を形にして残し、将来の人生を評価する自分の基準を作って欲しいのです。
その思いから今回、優れた卒業論文を執筆した先輩たちの声を集めてみました。どんなテーマに取り組んだのか、また書き終えてどうだったのかなど、参考にしてみてください。

No.01 テーマに自信を持つことが執筆に大きな影響を与える

シルヴィア・スレイのヌード論 ——フェミニズム批評を超えて——
キリスト教学科 鳥海 あかり さん

卒論では、専攻の西洋美術史と個人的に興味のあった文学におけるジェンダー批評を融合するテーマを選びたいと思いました。身体は西洋絵画の重要な主題であるため、ヌード画を分析することで絵画イメージがジェンダーやセクシュアリティーをどのように表象し、規定してきたかを探ることができる。さらにはフェミニズムの意図を持ったシルヴィア・スレイの男性ヌード作品を取り上げることで既存のジェンダーやセクシュアリティーの枠組みを撹乱するクィアな視点から捉えることができると考え、テーマを決めました。
日本では研究書の数が多くない分野でしたので、文献を探すことも原書で文献を読むことも大変でしたが、自分の思考を整理しながら論理的な文章にまとめ上げたことで現在の自分がどのような問題意識を持っているのかを認識することができ、ある程度の分量のアカデミックな文章を書けたことが自信につながりました。
これから卒論を執筆しようとする方には、自分のテーマに自信が持てることが執筆に大きな影響を与えると経験から感じましたので、指導教授とよく相談しながら何よりも自分が面白いと思えるテーマを慎重に設定することをお勧めしたいと思います。

No.02 あらゆる場面で役立つコミュニケーション技術を獲得できた

自動拳銃と資本主義 ——A Gun for Saleにおける脱人間化の問題
文学科 英米文学専修 髙橋 美帆 さん

私はグレアム・グリーンの作品における「理想と現実の乖離によって葛藤を余儀なくされる主人公」に興味を持っており、なかでも『拳銃売ります』の主人公はこうした要素を色濃く備えていたため、テーマとして論じてみたいと考えました。

執筆の過程では、英語の論文を自説の補強や反証に活用できる水準で理解することが一つの難関でした。高度な語学力や背景知識がないと解釈が難しい文章に出会った際は、その都度先生に相談しました。また、月一回のペースで先生に原稿を添削していただき、今後の方針を相談や関連論文をご教示いただきました。これから執筆される方にも、できる限り先生に見ていただくことをお勧めします。論文執筆にはどうしても孤独な作業が伴いますので、いつの間にか矛盾や無知ゆえの誤解、当初の仮説へのこだわりなどが生まれてしまうことがあります。でも、定期的に見ていただくことで軌道修正もしやすくなりますし、何よりも日々進歩する様子を見守ってくれる先生の存在が長い論文を書き切る原動力になりました。

完成まで苦労はしましたが、誰にでも伝わる言葉で独自の意見や発見を表現できたことに満足しています。卒論を通じて獲得したコミュニケーション技術は、アカデミックな場面だけでなく、今後の生活でも必要不可欠な技術だと感じています。

No.03 大学生活における留学を含めた学びを作品として残すことができた

絹織物の町リヨン ~歴史・現在・日本~
文学科 フランス文学専修 上原 早葉 さん

もともと、地元・群馬県にある富岡製糸場とフランス・リヨンの絹織物を通した交流に興味があり、実際にリヨンに留学した際に絹織物工房などを訪れたことでより関心が高まったため、このテーマに決めました。最終的には、リヨン絹織物産業に関する概説書を翻訳した上で、絹織物を通した日仏交流という視点から解説を行うという内容のものになりました。

翻訳した本が実際の歴史に関するものでしたので、できる限り歴史的事実に沿った訳にするために、複数の文献を参考にしながら作業を進めていきました。ただ訳すのではなく、いかに日本語としてわかりやすい文章にできるかに注力し検討を重ねました。

卒業制作を行って最も良かった点は、留学を含めた大学生活における学びを一つの作品として残すことができたことです。翻訳にも取り組みながら多くの文献にふれたことで、研究テーマに関する知識を深めることができました。

卒業論文(制作)には多くの時間を費やすことになるので、自分の好きなテーマを見つけて取り組むことが重要です。本当に興味のあるテーマであれば、とても楽しく充実した経験になると思います。大学生活の総まとめになるものですので、是非後輩の皆さんにも挑戦していただきたいです。

No.04 卒論は達成感以上のものを与えてくれる生涯の大きな節目であり通過点

神仙境像考『懐風藻』 ——吉野詩の意義——
文学科 日本文学専修 藤田 茉莉佳 さん

大学での講義で、漢文が現代日本語の元であり東アジア漢字文化圏における共通語であり、日本で作られた漢文や漢詩は漢字文化圏における日本像を表していたと知りました。当時の日本の支配者層にとって必須の教養でもあったことから、大学生活の集大成である卒論のテーマにしたいという意欲が掻き立てられました。特に日本漢詩の初源とされる『懐風藻』について新たな視点で論じる必要性があると考え、なかでも祖母や母から日頃話を聞いていた大和中南和地方が舞台の吉野詩を論じることにしました。

先行研究が少なく苦労しましたが、先生から「新たな論点を提示できる利点がある」と助言され自信を持つことができました。

卒論を書くにあたっては、根拠となる文献と自分の考えを順序立てて論じれば自ずと相応の字数にはなるので字数に怯える必要もありませんし、授業での気づきや疑問、興味関心によってテーマは自然と決まりますので、身構える必要はないと思います。執筆中に思いもよらなかった考えが浮かぶことやたくさんの副産物もあります。そのためには、日々の講義や課題を蔑ろにせず、自発的に関連資料を読むことが大切となります。

卒論は達成感以上のものを与えてくれる生涯の大きな節目であり通過点。この経験ができるのは今この時だけ。自分の生涯の研究テーマに出会える卒論を書いてみませんか。

No.05 後ろめたさを感じながらBLを愛していた自分の心が救われた

オルタナティブな恋愛物語としてのBL
文学科文芸・思想専修 筒井 なぎさ さん

元々ボーイズラブ(BL)を描いた作品が好きで読んでいたところ、女性的な男性、男性的な女性が好意的に描かれている作品が多いことに気づきました。また、同性愛に対する差別を描いた作品も多く、一般の漫画作品よりジェンダーやセクシュアリティーに深く切り込んだジャンルであると感じました。そのような作品が女性を中心に支持を集めているということは、多くの女性が既成のジェンダー観に居心地の悪さを感じている証拠なのではないかと考え「新しい性の在り方を提示する恋愛物語」としてBLを捉え直そうと思ったのが卒論執筆のきっかけです。

新しいジャンルだからこその問題もあり、どのような切り口にするかなかなか決まらず苦労しましたが、論文にしたことで教授の方々が学問として真剣にBLを捉えてくださり、学問的・社会的な価値を示せたことが非常に嬉しく、後ろめたさを感じながらBLを愛していた自分の心が救われた気がしました。

後輩の方へのアドバイスとしては「とりあえず書いてみる!」。これに尽きます。私も何度も諦めかけましたが、教授に励ましていただきなんとか書き上げることができました。関連する研究書に早めに目を通しておくと、点と点が線になる瞬間が訪れるので、構想が決まりやすいと思います。

No.06 専攻は何であれ自分の研究を成し遂げることに意味がある

2世紀中東におけるローマ帝国東部辺境の経営 ~ユーフラテス辺境とアラビア辺境の考察~
史学科 世界史学専修 吉澤 絵恋 さん

異文化交流に興味があり、イギリス留学中に要塞や軍事に着目した辺境に関する授業を履修した経験から、境界地帯、特にヨーロッパと比べ未だ研究が十分に行われていない中東地域を研究対象に選びました。

執筆は長期間にわたる作業となるため、進捗状況の管理に苦労しました。資料を読み進めながら内容や結論を変更していったため、期限までに終わるのかという不安が常につきまといました。

完成した時は、史学科に入学したことを誇りに思えるまでの心境に至りました。研究者以外の進路を選択する人にとっては、文学部は入学した意義が問われることが多いように感じていましたが、何を専攻していようと自分の研究を最後まで成し遂げることに意味があることに卒論を通じて気づきました。この学びは社会に出た後も活きてくる貴重なものだと感じています。
私が卒論を書いたのは、史学科で研究した証を残したいという思いがあったからでもあります。文学部所属にもかかわらず読書が苦手という弱点を抱えながらも卒論に取り組み、平凡な大学生だった私の卒論がまさか優秀作品に選ばれるとは思ってもいませんでした。卒論を書くか書かないかは自由ですが、最後の年くらい勉強と遊びを両立させる大学生らしさを満喫するのも一案だと思います。自信や誇りが得られますし、思いもよらぬ経験ができるかもしれません。

No.07 主体的に考える力と批判的思考力の獲得が大学院進学への自信となった

近世朝廷社会と口向役人 ——御所取次・土山家を主な対象として——
史学科 日本史学専修 細谷 篤志 さん

2年次より在籍した日本近世史ゼミで、主に百姓・町人や都市下層民衆などに関する史料・論文を輪読し、民衆の暮らしを見据えた歴史研究の重要性を学びました。そこで、卒論ではかねて関心のあった近世の天皇・朝廷について「下からの視座」から扱いたいと考え、朝廷下級役人である口向役人をテーマに選びました。考察を通して、口向役人の多くが御所周辺の町・村から恒常的に供給されていたことを明らかにしました。

実際に作業に入ってみて、先行研究が少ないこともあり研究意義の提示と論の構築に苦心しました。そこで、まずは関連する史料・論文を渉猟・収集し、歴史的諸事実の確定を試みることにしました。特に史料については未刊行のものを多く使用したため、読解に際しては近世文書特有のくずし字と呼ばれる筆致の解読に苦しめられました。しかし、努力の甲斐あって新たな近世朝廷像の構築に多少なりとも寄与しうる成果を挙げられたと考えています。

卒論では、自ら問いを立ててそれに答えるという「自問自答」の姿勢が求められます。執筆作業を通じて、自らが主体的に考える力と批判的思考力が養われたと思います。もちろん、歴史研究に必須となる史料・論文の読解能力もさらに高めることができ、大学院へ進学する自信にもつながりました。

No.08 好奇心を原動力に自分の疑問と向き合い、貴重な機会を楽しもう!

誰のための「貧困」か 〜スラムツーリズムの中のオリエンタリズム〜
教育学科 小野 秀斗 さん

趣味の海外旅行で多くの途上国を訪れるなかで、欧米からの観光客の態度と言葉の間にギャップを感じたため、その理由を明らかにしたいと思い、テーマを設定しました。

実際に執筆作業に入ってみると、先行研究があまり行われていなかった分野でしたので、関連する文献や資料を集めることが一番大変でした。論文を集めるために他大学や大学院に連絡を取ったり、日本語で書かれた資料が少なかったため英語で書かれた資料を翻訳したりすることにも多くの時間を費やしました。

苦労はしましたが、これまでの大学生生活で学んできたことや経験してきたことの集大成としての卒業論文を書き上げることができました。学生生活で一つ「これをやったぞ!」と言えるものができたことは、これからの自分にとって大きな自信につながると考えています。

私は卒論を書く上で最も大切なことは、テーマの設定であると感じています。もしも皆さんがテーマに悩んだら、自分が普段生活していて疑問に思うことや不満や怒りを感じることをテーマにしてみてください。そして、好奇心を原動力に自分の疑問と向き合い、卒論執筆という貴重な機会を楽しんでください。

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