文学科英米文学専修 卒業生へのメッセージ

文学科英米文学専修教員から、卒業する皆さまへのメッセージです。

2020年度立教大学文学部文学科英米文学専修卒業生の皆さんへ

 皆さん、ご卒業おめでとうございます。

 例年ならば、タッカーホールの文学部卒業式に続いて、学科・専修別に行なわれる学位記配布で英米文学専修の教員一同、皆さんに直接祝意をお伝えするところですが、今年も、ちょうど一年程前から始まった新型コロナウィルス感染拡大の余波により、残念ながら昨年に続いて学位記配布は中止となりました。直接の対面がかなわないため、専修として皆さんのご卒業をお祝いするメッセージをホームページに掲載することに致します。

 昨年、文字通り降って湧いたような災難により、年度末の行事がすべて中止になったのと比べれば、今年はタッカーホールでの卒業式が行なわれるだけ恵まれていると言えるかもしれません。それでもはやはり、春学期の開始が3週間遅れ、感染拡大防止の観点から年間を通してほぼオンラインでしか学ぶことができず、キャンパスでの交流やサークル活動なども一切できませんでした。このような非常事態の下で、大学生活4年間の集大成としての最終学年を送らなければならなかったのは、皆さんにとって、残念、無念といった簡単な言葉ではとても片づけられない辛い経験だったと推測致します。

 しかし、人間社会、特に地震の多い場所に位置する日本列島は昔から天変地異に遭遇して、昨日まではあり得ないと考えていた非常事態に突如直面してきました。ちょうど10年前の3月に起こった東日本大震災もそうでした。そうした時に、われわれは平時には忘却していた先人たちの知恵に学んで、当座の避難活動に活かしたり、将来的な再発防止に向けて対策を練ったりしてきました。昨年4月に、ホームページに専修として掲げたメッセージでも述べた通り、われわれが学ぶ文学は、昔から常にこうした緊急事態をその主題の一つとして書き続けており、まさにこうした時にこそ頼るべき先人の知恵の宝庫なのです。

 その時にも言及したフランツ・カフカ『変身』、アルベール・カミュ『ペスト』、ダニエル・デフォー『ペストの記憶』(旧訳は『ペスト年代記』)などは、そうした知恵の数例にすぎません。文学は実践的学問と違いすぐに役立つものではないかもしれませんが、古典古代以来の自由七科のうちのほぼ三学(文法、修辞、論理学)を引き継ぐもので、あらゆる応用的学問の基礎であり、まさしくこのような非常事態において力を発揮します。土台がしっかりしていれば、その上に建つ家は揺らぎません。

 皆さんは、そうした先人の知恵の宝庫とも言える文学を学んだことに誇りを持って、卒業後の世界に飛び込み、このコロナ禍の危機を好機に変えて下さい。実世界では、コロナ以外のさまざまな日常的な困難にも遭遇すると思いますが、そういう時には、立教大学での学びと一緒に学んだ友人たちの顔を思い出して下さい。きっと立教で過ごした4年間が皆さんの血肉となって励ましてくれるはずです。今後の一層のご発展を心よりお祈り致します。

立教大学文学文学科英米文学専修教員一同

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