「全学共通科目言語B(必修)」言語選択に関する参考指針学部紹介

立教大学では、1年次に「言語B必修科目」として英語以外の外国語を履修することになっています。英語や日本語の資料だけで世界の歴史や諸問題を十分に理解することは難しく、新しい外国語を学ぶことはたいへん重要です。

ここに各学科・専修における言語Bの考え方や、2年次以降履修する専門科目との関係を示します。言語Bを選択するに際しては、2年次以降、どのような専門科目を勉強するのかをよく考えて下さい。なお、どの言語Bを選択しても、専門科目の選択に制限がかかることはありません。
キリスト教学科
キリスト教は約2000年の長きに亘り、世界のさまざまな地域の歴史や文化に影響を与えてきた世界宗教のひとつです。キリスト教学科はその多様な領域を人間学の視点から、さまざまな学問的アプローチを用いて学びます。「言語B必修科目」で提供される6つの言語では、世界のあらゆるキリスト教の諸相を知るには、まだ少なすぎます。

しかしそれらは国際的な通用度、話者人口の大きさ、歴史的な重要性や研究の蓄積という点で、また私たちに地理的・歴史的に縁の深い言語として、広範囲に亘るフィールドをカバーしています。したがって英語以外の第三言語としての「言語B必修科目」の選択は、今後皆さんがどのような領域や方法に重点をおいてキリスト教学を学ぶかに直接つながります。さらに大学での学びを超えて、これら第三言語は、キリスト教学をツールとして使うことで、将来皆さんが新しい世界に出て行くための大切な入口ともなるでしょう。

フランス語

フランス語圏は、音楽や美術を含めて、思想や文化、文学、および歴史の点でカトリック・キリスト教の分厚くて長い伝統があります。とくに中世キリスト教史やキリスト教思想を学ぶ上でフランス語は必須です。フランスが宗主国であったアジアやアフリカ、またカナダなどの諸地域のキリスト教を知るためにも役立ちます。スペイン語と同様にロマンス語に属する言語として、古代および中世ラテン語に学びを進めるための入り口としても適しています。

スペイン語

スペイン語圏のキリスト教は、フランス語圏と同様にカトリックの伝統が強く、スペイン本国のキリスト教に興味のある人と並んで、スペイン語が話される中南米地域のキリスト教に興味のある人にお勧めします。

また日本との関係で言えば、16世紀のザビエル来航に始まるキリスト教伝来に関連する、日本を含むアジア地域のキリスト教史について知るには、スペイン語の資料を読む必要があります。ポルトガル語と近い関係にあるので、ポルトガルやブラジルのキリスト教に関心のある人にも、よい入口となることでしょう。

ドイツ語

ドイツ語圏のキリスト教は、とりわけ16世紀の宗教改革によって、歴史や思想のみならず芸術や文化の点でも、周辺地域および世界に大きな影響を与えてきました。また19-20世紀にはキリスト教思想、歴史研究や古代文献学などが大いに発展し、ドイツ語圏のキリスト教は世界のキリスト教学研究をリードしてきました。古代中世のキリスト教史や聖書学を学びたい人にとって、ドイツ語は今でも重要です。またオランダ語その他の北欧諸言語と近い関係にあり、ドイツ周辺地域のキリスト教に関心のある人にも、よい入口となります。

ロシア語

キリスト教は古代以来、ローマを中心とする西方キリスト教と並んで、コンスタンティノープル(現在のイスタンブール)を中心とする東方キリスト教、つまり主としてビザンティン文化によって担われたキリスト教の伝統があり、それらはスラブ系言語の話者たちに継承されました。現在はバルカン半島やギリシア、中央アジアの諸地域からロシアに至るキリスト教となって広がっています。日本にも19世紀後半にロシア正教が到来し、とりわけキリスト教思想および文学を通して今に至るまで大きな影響を与えています。

中国語

中国系文化は古代以来、いわゆる中国本土を中心に、台湾、香港、中央および東南アジアなどに広がっており、西欧や東欧のキリスト教からは独立した文化圏であるように見えるかもしれません。それでも6世紀にはネストリウス派のキリスト教(景教)が、また16世紀には、日本と同様に、カトリックのキリスト教、そして、19世紀からはプロテスタントのキリスト教が中国を中心とした諸地域に伝来しています。さらに現代のアジア地域は、日本からは想像もできないほどの大きなキリスト教人口を抱えており、中国語はアジアのキリスト教を知るうえで欠くことのできないツールです。

朝鮮語

地理的に日本に近い朝鮮半島に、日本以上のキリスト教人口があることは、よくご存じでしょう。古代以来、日本と朝鮮半島は緊密な文化的・歴史的な関係にあります。キリスト教の点では、とりわけ近現代のキリスト教史、中でも日本による朝鮮半島の植民地化を含む20世紀の交流史は、現代キリスト教史の重要なチャプターのひとつです。中国キリスト教と同様、朝鮮語を話すキリスト教、およびそこから生まれるキリスト教諸学との対話は、今後の日本のキリスト教およびキリスト教学にとってますます重要になることでしょう。
文学科 英米文学専修
日本語情報、英語情報だけでなく、多様な視点から国際的問題を考える上でも、もう一つ外国語を学ぶことが大切です。ここに言語Bと文学部文学科英米文学専修の学習との関係を示します。言語Bを選択する際の参考にして下さい。なお、どの言語Bを選択しても、専門科目の選択に制限がかかることはありませんが、将来的に大学院英米文学専攻への進学を考えている学生は、入学試験の第二外国語科目に含まれているものを選択することを推奨します。

博士課程前期(修士)課程入学試験で選択できる第二外国語は、ドイツ語、フランス語、スペイン語、中国語、朝鮮・韓国語の5言語。博士課程後期課程入学試験では、ドイツ語、フランス語、スペイン語の3言語に絞られます。後期課程までの進学を視野に入れている学生は、この3言語から選択しておけば、受験時期になってから新しい外国語に取り組まなくても済みます。これについては、将来英語圏にある大学院に進学し、より高い学位の取得を目標にしている場合にも同様です。博士号の授与に際し、ドイツ語、フランス語、スペイン語等、ヨーロッパの言語の試験を課している機関が多く存在しています。
簡単ではありますが、以下の説明が言語B選択の参考になれば幸いです。

ドイツ語、フランス語、スペイン語 と英語・英米文学の関わり

英米文学専修が主たる対象とする言語は英語ですが、近代英語(Modern English)の源流にあるのは、5世紀の後半にゲルマン民族大移動の一環として、主に北ドイツ地方からケルト人の定住していたブリテン島に侵入したアングロ・サクソン人の用いていた古いドイツ語です。これを古英語(Old English)と呼びます。古英語の時代が暫く続いた後、フランス北部に定住して中世期のフランス語を話していた北欧バイキングの末裔ノルマン人が、1066年にブリテン島の王位継承権を主張して攻め込み、ノルマン征服(Norman Conquest)が行なわれます。

暫くは、古いドイツ語とフランス語が並立していましたが、やがて融合して新しい英語、中期英語(Middle English)が誕生します。これがおおむね14世紀の終わりまで用いられ、大母音推移(Great Vowel Shift)を伴う移行期を経て15世紀後半に近代英語が成立して、その後多少の変化はありましたが今に至っています。このような近代英語成立の歴史を振り返ると、英語とそれに基づいた文学や文化を理解するためには、英語の父母とも言える独仏語の理解は必要不可欠だと考えられます。英米文学専修は、このドイツ語、フランス語のいずれかを一年次必修の言語Bの中に含めるよう推奨します。

古英語など、初期近代以前の英語や文学に興味がある学生はドイツ語を、近代以降の英語や文学に関心を持つ学生はフランス語を選択すると、より効果的な学びが期待できるでしょう。また、シェイクスピアが活躍した16世紀後半エリザベス朝期のイギリスとスペインの外交関係や、近現代アメリカ文学と中南米諸国ならびにカリブ海地域の政治・文化との影響関係を考えると、将来的にその方面の学習を考えている学生は、スペイン語を選択してもいいでしょう。

中国語、朝鮮語 と英語圏文学の関わり

近年、文学の創作や消費を、各国語を超えた営みとして再考する世界文学という枠組みがあります。とりわけアメリカ合衆国を中心として、中国や韓国・朝鮮をルーツとする作家たちが、世界に広がる英語圏のアジア人読者に訴えかけるような作品を発表し、そうした枠組みの中で評価を高めている傾向が見られます。またこの傾向は、音楽や映画などの大衆文化とも連動しています。中国語や朝鮮語は、英語の成り立ちには直接関係ありません。しかし、こうした英語圏文学の新局面に興味のある学生は、中国語、朝鮮語の履修によって、作品解釈や文化理解を促す知識を深めることも可能でしょう。
文学科 ドイツ文学専修
言語Bとして全員がドイツ語を履修します。これと同時に文学部専門科目である指定科目A(ドイツ語入門)においてドイツ語を学習し、2年次以降の指定科目A、B1、B2、Cなどに繋げてゆきます。
文学科 フランス文学専修
言語Bとして全員がフランス語を履修します。これと同時に文学部専門科目である指定科目A(フランス語入門)においてフランス語を学習し、2年次以降の指定科目A、B1、B2、Cなどに繋げてゆきます。
文学科 日本文学専修

フランス語

フランスの文学・歴史・文化に関心がある人に履修をお勧めします。比較という視点をもつことで、日本文学・日本語に関する理解をいっそう豊かなものにすることができるでしょう。たとえば、日本とフランスとの間の比較文学、対照言語学、翻訳の問題、近代の作家の渡航体験をめぐる問題などを考える際に、フランス語は大いに役立つでしょう。また、フランスでは文学・歴史・美術・言語などの領域を扱う日本学・日本研究が盛んに続けられています。また、日本関係の古典籍や美術品コレクションを所蔵する大学・博物館・美術館も少なくありません。将来、そうした環境に留学して学ぶことも、日本文学専修の学生としての選択肢のひとつです。

スペイン語

スペインや中南米の国々の文学・歴史・文化に関心がある人や、将来、ポルトガル語を学んでみたいという人に履修をお勧めします。たとえば、日本とスペイン語圏の国との間の比較文学、対照言語学、翻訳の問題、遡ってザビエルや天正遣欧使節団派遣のころの対外交流史を視野に入れた古典研究などに取り組もうとするとき、スペイン語は大いに役立つでしょう。現在、スペイン語圏での日本文学の翻訳や研究はかなり進んできています。そうした環境との交流は、これからますます進展することでしょう。将来、新しい関係を築きながら、日本文学・日本語の魅力を発信していくことも、日本文学専修の学生としての役割のひとつです。

ドイツ語

ドイツ、オーストリア、スイスなどの国々の文学・歴史・文化に関心がある人に履修をお勧めします。比較という視点をもつことで、日本文学・日本語に関する理解をいっそう豊かなものにすることができるでしょう。たとえば、日本とドイツとの間の比較文学、対照言語学、翻訳の問題、明治期の日本文学史の成立をめぐる問題などを考える際に、ドイツ語の能力は有効でしょう。また、現在でも、ドイツでは文学・歴史・美術・言語などの領域を扱う日本学・日本研究が盛んですし、日本関係の古典籍や美術品コレクションを所蔵する大学・博物館・美術館も少なくありません。将来、日本文学専修の学生としてそうした環境に留学することも考えられるでしょう。

ロシア語

ロシアや東欧、中央アジア諸国の文学・歴史・文化に関心がある人に履修をお勧めします。二葉亭四迷がロシア文学の翻訳を手がけたことはよく知られていますが、日本の文学や演劇・音楽は、ロシアのそれとの間でさまざまに影響しあってきました。また、語学面では、漂流民からの聞き取りをもとにして18世紀にロシアで作成された初の露日辞典を通して、当時の日本語・方言・音韻の研究が進んでもいます。加えて、東欧を含めて、日本文学の翻訳と研究は着実に進みつつあります。翻訳、比較文学、対照言語学といったテーマに取り組む際、ロシア語はとても重要です。

中国語

中華人民共和国や台湾、香港、また、中国の影響を受けた東南アジア・中央アジアの文学・歴史・文化に関心がある人に履修をお勧めします。日本が、文学・語学・思想などの面で、古くから中国の大きな影響を受けてきたことはいうまでもありません。中国語を学ぶことで、これまで訓読を通して学んできた漢文(中国古典)の世界の見え方が一変することでしょう。また、古典文学に現れる中国故事の影響や仏教経典との関係を分析する際や、近現代における東アジアの国際関係を踏まえた文学を読む際にも、中国語を駆使できることは大きな財産となるでしょう。将来は、中国国内に伝わる日本関係資料を探しにでかけることもあるかもしれません。東アジアの漢字・漢文文化圏に接する方法のひとつとして、中国語に取り組んでみてください。

朝鮮語

韓国・朝鮮の文学・歴史・文化に関心がある人に履修をお勧めします。古代から現代に至るまで、日本と韓国・朝鮮の人々はさまざまな形で交流・交渉を続けてきました。日本文学・日本語学と韓国・朝鮮の文学・言語の関係は、時代を問わずさまざまな形で確認することができます。中国だけではなく朝鮮半島の状況もきちんと視野に入れて、東アジア世界における日本文学の歩みを理解することが求められています。最も近い隣国との比較という視点をもつことは、日本文学・日本語に関する理解をいっそう正確で、豊かなものにすることにもつながるでしょう。
文学科 文芸・思想専修
文学科文芸・思想専修で英語に加えて新しい外国語を学ぶ大きな理由は二つあります。本専修では日本の文芸だけではなく、翻訳なども使いながら世界の文芸や思想と積極的に接し、世界の多くの地域の文芸創作や思想建設の営みを学びます。その上で的確な日本語を用いて自らの考えたことを文芸あるいは思想的文章の形で表現する力を身につけます。

一つめの理由は、文芸および思想はその表現媒体である言語と表裏一体であり、言語の特性を理解して初めてその内容も十分に理解できるからです。
その意味で、世界の文芸や思想に学んで自分の思想とその表現力を鍛える文芸・思想専修での学びにとって言語Bを学ぶことは非常に重要なのです。二つめの理由は、日本語や英語の特性を知ることができるからです。第三の言語を新たに学びますと、日本語や英語の独自の性格が鮮明に見えるようになります。大学で日本語を強く意識して表現力を向上させようとする皆さんにとって、英語だけでなく新しい言語を学習することは大いに有益なのです。英語も新鮮に見えるはずです。

皆さんが言語Bを選択するに当たり、入学動機となった関心や入学後の勉強目標とのつながりから有益な選択となるように、文芸・思想専修から参考情報を提供します。立教大学での言語Bの選択肢はドイツ語、フランス語、スペイン語、ロシア語、中国語、朝鮮語の6言語です。これらの一つが第三の言語への入り口として学ばれます。なお、2年次以降は幅を広げて第四の言語を学ぶこともできます。文芸・思想専修では広く世界の文芸と思想を交差させて学びますので、どの言語を学んでも講義科目や演習科目に学んだ言語に関連する事象や用語、考え方が扱われます。どの言語を選択しても学習に有利不利はありません。以下のそれぞれの言語に関連して授業で扱われる可能性のある人名や事項を参考にして、自分のこれまでの関心や興味をも考慮して選択してください。

ドイツ語

  • 近現代哲学思想の宝庫としてのドイツ語文化圏。理性哲学のカント、弁証法のヘーゲル、ニヒリズムのニーチェ、社会主義のマルクス、実存哲学のハイデガーやヤスパース、社会哲学のハーバーマス、批判理論のフランクフルト学派、解釈学のディルタイやガダマー、分析哲学と科学哲学の父ヴィトゲンシュタインとウィーン学派など。文化文明批評のベンヤミン。
  • 近代芸術運動の担い手としてのドイツ。古典主義やロマン主義、表現主義の芸術運動。バウハウスのモダニズム建築運動。バッハ、モーツァルト、ベートーベンの古典音楽から新ウィーン楽派の無調音楽に至るドイツクラシック音楽。
  • 人文社会科学全般に幅広い影響を与えている精神分析学。フロイト、ユング。
  • 日本近代文学の模範のひとつ。ドイツ文学を基礎とした森鷗外。日本に影響を与えたドイツ古典文学のゲーテとシラー、ドイツの詩人リルケ、ハイネ、チェコのユダヤ人ドイツ語作家カフカ、スイスのドイツ語ノーベル賞作家ヘッセ、など。ドイツ語ノーベル文学賞受賞者はトーマス・マン、ギュンター・グラス他総勢13名。
  • ドイツ文学・思想から影響を受けた芥川賞作家もいます。阿部公房(1951年受賞)、北杜夫(1960年)、学生運動時代を反映した柴田翔(1964年)、1960年代に立教大学助教授だった古井由吉(1971年)、多和田葉子(1993年)、磯崎憲一郎(2009年)、赤染晶子(2010年)、など。

フランス語

  • フランス語は、世界の多くの地域で話されています。また、国際連合、国際オリンピック委員会、国際労働機関、世界貿易機関など多くの国際機関において英語とともに広く使用されている言語です。
  • フランスは数多くの素晴らしい作家たちを生んできました。ラブレー、モンテーニュ、ラシーヌ、ルソー、ディドロ、バルザック、ボードレール、フローベール、ランボー、マラルメ、ヴァレリー、ジッド、プルースト、サルトル、カミュらの作品は、日本を含む世界のさまざまな地域の文学者たちに熱心に読まれてきました。フランス語は、創作について学びたいと考えているのであれば、ぜひとも学ぶべき言語です。
  • 思想の分野に目を向ければ、フランスは1960年代以降、現在に至るまで、人文知の領域で重要な思想家として読み継がれているレヴィ=ストロース、フーコー、デリダ、ドゥルーズ、ブルデューなどを輩出してきました。
  • フランスは芸術の国です。フランス語を学ぶことは、ドラクロワ、マネ、モネ、セザンヌ、ゴーガン、マティスといった画家や、ドビュッシー、ラヴェルといった音楽家たち、トリュフォーやゴダールなどヌーヴェルヴァーグの映画監督たちを生んだ文化と歴史の多様性と豊かさを学ぶことにつながります。
  • 「パティシエ」という言葉がよく耳にされるようになりましたが、これはフランス語です(お菓子を作る人のことです)。フランスと聞いて、食文化の豊かさを思い浮かべる人も多いでしょう。フランス料理やフランス菓子の魅力をより深く味わうためにもフランス語を学ぶのはいかがでしょうか。
  • フランスはファッション大国です。パリ・コレなど世界のモードの中心的な発信地のひとつであり続けています。
  • フランスはもともと知日家・親日家の多い国です。かつては日本の伝統文化・芸能や文学の愛好者が多かったのですが、最近では日本のサブカルチャー——漫画やアニメ、ポップミュージック、ファッションなど——の熱烈なファンが増えてきています。フランス語を学び、そうした人たちと交流することは、フランスの「今」を理解すると同時に、現代日本の社会と文化をよりよく理解する一助となるはずです。

スペイン語

  • スペイン語は英語と同じグローバル言語です。英語に次いで世界中の人々に話され、読まれ、書かれている言葉です。
  • スペイン語といえばサッカーやエスニック料理が思い浮かぶでしょうが、それだけではありません。サルサやタンゴのリズムはスペイン語の息づかいなしには存在しえなかったでしょう。サグラダ・ファミリア教会のハイパーなゴシック建築や、ゴヤやベラスケスの謎めいた絵画世界は、スペイン語の神秘的な世界観と繋がっています。
  • 魔術的リアリズムや幻想小説はラテンアメリカ文学のなかで華開きました。ガルシア・マルケスやバルガス・リョサのようなノーベル文学賞級の作家が、現在も次々と超弩級の作品を生みだしていて、世界文学の重要な一端を形作っています。
  • ブラジルの国旗には、近代フランスの哲学者オーギュスト・コントの言葉が記されていますが、啓蒙主義や実証主義、ロマン主義、構造主義、脱構築などの近現代の欧米哲学はラテンアメリカの思想文化に大きな影響を与え、現地で独自な発展を遂げました。ラテンアメリカ思想文化が「近代の実験場」といわれる所以です。
  • スペイン語圏はスペインやラテンアメリカ、カリブ地域にとどまりません。アメリカ合衆国もしっかりスペイン語圏に入っています。ラップやヒップホップ、チカーノ文学、ラティーノ(ヒスパニック)文学など、アメリカ文化の隅々にまでスペイン語は息づいていて、表面的には英語一色に染められているかにみえるアメリカ文化にダイナミックな底力と多様性をもたらしています。

ロシア語

  • 世界の芸術・文化・思想はロシア抜きでは語れません。
  • 文芸ではトルストイ、ドストエフスキー、ゴーゴリ、ショーロホフ、パステルナークなどの雄渾な大長編が有名です。また、プーシキンなどの優れた詩人もたくさんいます。チェーホフのような戯曲・演劇でもロシアは有名です。
  • 音楽ではチャイコフスキーのような西欧的音楽やリムスキー・コルサコフやムソルグスキーなどのロシア民族義音楽、それに現代音楽に繋がるストラヴィンスキーなどの豊かな潮流があります。彼らの作曲による音楽の上に、バレエを芸術として完成させたのもロシアです。
  • 美術においてはシャガール、カンディンスキーにロシア・アヴァンギャルドが特に知られています。
  • 1980年代までは映画大国でもあり、エイゼンシュテイン『戦艦ポチョムキン』やタルコフスキー『惑星ソラリス』など映画史に残る傑作も数多くあり、チェブラーシカ』シリーズなどの優れたアニメ作品もあります。
  • 響きのとても美しいロシア語を学ぶことは、あなたの芸術・文化理解を深める一助となるでしょう。

中国語

  • 魯迅「故郷」は入門演習で取り上げられることもあります。日本の中学国語では竹内好訳で読まれますが、竹内訳には批判もあります。中国語を学習すれば、その是非を自分で判断することができます。
  • 哲学講義では、毛沢東など近現代中国思想に触れることもあります。中国語を学習すれば彼らの原文にアクセスできます。また、『論語』などの古典についても、中国語音で読み中国語としての理解を深める道が開けます。
  • 村上春樹や東野圭吾は中国語圏でも人気があります。こちらが中国語圏の文学や映画の魅力を知れば、相互理解をより深められるでしょう。
  • 古代の漢字・漢文の受容はもちろん、その後も日本語は中国語からの刺激を受けてきました。道元の「只管打坐(しかんたざ)」は、当時の(そして今でも通用する)中国語表現です。今後も中国語を媒介に新しい日本語表現が生まれるかもしれません。中国語を背景に日本語で執筆活動をする人々(楊逸、温又柔など)も注目されます。

朝鮮語

  • 韓国・朝鮮の長い歴史、朝鮮半島との交流の歴史を知ることは日本史・日本文化についての理解を深めることになります。韓国・朝鮮は日本に最も近い「外国」であり、そうした国の言語を学ぶことは、日本の歴史や文化の本質を正しく理解するのにも役立ちます。
  • 韓流ドラマやK-POPなどの新しい文化現象。韓国はポップスターを多く輩出しており、国境を超えて多くのファンを獲得しています。現代のアジアのつながりを考えるのにも、韓国の文化的生産力は大きな意味をもっています。
  • 韓国は映画にも力を入れています。劇映画からドキュメンタリーまで、日本では作れないような迫力のある作品も多いです。朝鮮の言語を学ぶことで、それらの作品を深く知るチャンスが生まれます。
史学科
史学科では、日本や英語圏の歴史や文化を学ぶだけでなく、世界のあらゆる地域の歴史や文化、また世界のあらゆる多文化的・多言語的状況を学びますから、日本語情報や英語情報だけでなく、第3言語による情報を取得することはとても重要です。
みなさんの多くは、ご入学前、どの専修に進学するか、まだ決めかねていることでしょう。専修への進学が決まるのは、2年次への進級に際し所属ゼミを決定するとき(例年、1月)ですから、今後1年間、どうかよくお考えになって決めてください。

その際、言語B科目の選択は、みなさんのゼミ選択、ひいては、ゼミでの学習を基礎に三年次と四年次に執筆する予備論文・卒業論文の可能性を拡げるという点で、きわめて大きな意味を持つ、ということをぜひお伝えしておきたいと思います。言語B科目として用意されているわずか6つの諸言語は、世界に数千にも及ぶ言語があることを考えると、到底十分なラインナップとはいえませんが、それでも、世界の母語話者・第二言語話者・言語習得者のかなりの部分をカバーしています。以下では、それぞれの言語について、みなさんの選択の可能性をどのように拡げるかという点に焦点を当てて、簡単な解説を示します。どうか参考になさってください。

フランス語

フランス史やフランスの地理・文化現象を学習したり、研究したりする際には、もちろん必要な言語ですが、アフリカやアジアでフランスやベルギーが宗主国であった国々、またスイスの一部やカナダの一部の歴史や文化を学習・研究する際にも有用です。また、フランス語は、17世紀から19世紀までヨーロッパの外交用語でしたから、ヨーロッパの国々の外交関係に関心のあるみなさんにとっても役立つでしょう。さらに、フランス語は、スペイン語とならんで、いわゆるロマンス語に属しますので、古典語であるラテン語の学習、また西洋古代史に興味がある方にとっても、おすすめの言語です。

スペイン語

スペイン史やスペインの地理・文化現象を学習したり、研究したりする際には、もちろん必要な言語ですが、中南米の歴史や文化、また、アメリカ合衆国のヒスパニック系の文化現象を学ぶ際にも役立ちます。フランス語と同じく、ロマンス系言語ですので、古典語学習の前段階にもおすすめの言語ですし、ブラジルで使われているポルトガル語とも近縁関係にありますから、ポルトガルやブラジルの歴史や文化に関心のある方も、まずはスペイン語から学んでおくとよいでしょう。

ドイツ語

ドイツ、オーストリア、ルクセンブルク、スイスなどの国々の歴史・文化を学習するのに役立ちますが、ドイツ語は、ヨーロッパ言語の中でも、北欧系諸言語やオランダ語と同じくゲルマン系言語に属しますから、将来、それらの諸言語を学びたいと考えている人は、まず、ドイツ語を学んでおくことをお勧めします。

ドイツは、今のように学問世界で英語が主流になる前、自然科学の分野でも、人文学の分野でも、優れた研究者を多数輩出し、世界の学問をリードした時代がありました(19世紀から20世紀前半)。その時代の学問世界の研究に興味がある方はもちろん、特に、その時代に研究が進んだ西洋古代史を学習・研究したい方も、ドイツ語を読めないと重要な知見が得られない分野があるということを念頭に置いておいていただければと思います。

ロシア語

ロシア史、ソ連史、ロシアの地理や文化に関心のある方はもちろんですが、スラブ系言語が用いられている東欧の国々の歴史や文化、また旧ソ連の中央アジア諸国の歴史や文化に関心を持つ方も、ロシア語を学んでおかれることをお勧めします。日本史でも、18世紀以降の対露関係、日露戦争、シベリア出兵等に興味を持つ方は、ぜひ履修してください。

中国語

中国語を学ぶことで、中華人民共和国に限らず、台湾・香港、東南アジアの華人、アメリカやヨーロッパの華人たちの歴史や文化、またそれらのひとたちの発信する情報をキャッチアップできます。また、近年中国の影響が顕著である中央アジアやアフリカに関する情報も、中国の目を通して得ることができます。

ネットで情報を検索するときも、日本語と英語だけでは偏りがちになりますが、ここで中国語を加えることで、よりバランスのとれた世界認識が得られるかもしれません。日本史やアジアの歴史を学ぶとき、いわゆる漢文史料を読む必要が出て来ますが、これを中国語として読むことで、漢文読みでは気づかなかった発見があります。将来の強力なアイテムとして、ぜひ中国語に挑戦してみて下さい。

朝鮮語

韓国・朝鮮の歴史、あるいは韓流、KPOPなど文化現象に関心を持つ方はぜひ履修してください。また、日本の古代史、中世史、近世史、近現代史の分野でも、日本と韓国・朝鮮との交流・交渉・外交関係を学びたい方にもお勧めします。韓国・朝鮮は、日本に最も近い「外国」です。そうした国の言語を学ぶことは、日本の歴史や文化の本質を正しく理解するのにも役立つことでしょう。
教育学科
日本の教育制度は、明治以降はドイツに、戦後はアメリカに大きく影響を受けて成立しました。教育思想史には、ドイツの哲学者、教育学者、フランスの哲学者が必ず登場します。例えば、次のような思想家の原典を読むことができれば素晴らしいと思います。カント、フィヒテ、ヘーゲル、フンボルト、ハーバマス、ルソー、デカルト、ベルクソン、フーコー。一度くらいは名前を目にしたことがあるのではないでしょうか。あるいは、ロシア語を学び、発達心理学者のヴィゴツキーの原典に挑戦してはいかがでしょうか。これらをその言語で読むことができれば、教育の世界を広く、深く見わたすことができるようになるでしょう。

中国語朝鮮語を学ぶことで、日本を含む東アジア地域の教育の共通性を認識することができると思います。わたしたちがどのような教育をこれまで受けてきたかを相対化するために、隣国の教育を見ることはとても重要なことです。スペイン語は、開発教育に興味がある学生のみなさんに挑戦してもらいたい言語のひとつです。最近では、日本の教育方法・技術が世界へ輸出されたりもしています。
教育学科では、言語Bが話される国や地域の研究に特化した研究を行っている教員もいますし、言語Bにかかわるヨーロッパの教育やアジアの教育といったより大きな枠組みで研究することもできます。言語Bを生かせる教育学科の専門科目には、比較教育学1・2、国際教育論、また演習や卒業論文(制作)指導演習などがあります。

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